【元祖莚寿堂本舗】多賀大社名物「糸切餅」の真実

【元祖莚寿堂本舗】多賀大社名物「糸切餅」の真実

2025.3.6彦根・湖東

どうしても諦められなかったあのお餅

biwacommon編集部のひーちゃんです。

2月後半の三連休、滋賀県第一の大社・多賀大社(愛称:お多賀さん)へ詣ろうと計画していました。ところが、その週末に限ってあいにくの雪模様。スタッドレスのない車で北の方へ向かうのは厳しいなと断念することにしました。

とはいえ、もうすっかり「糸切餅の口」になっていた私。他の甘いもので満たそうとしましたが、まずは近場で買えるところがないか検索してみることにしました。

やった~、ありました!!

隣市の近鉄百貨店草津店で糸切餅の取扱いがあることを発見。ここなら買いに行けそう、と寒いなか餅を求めて出かけることにしました。

やっぱり可愛いお多賀さんの名物和菓子

さて百貨店で無事に糸切餅を手に入れました。以前も買ったことのある【元祖莚寿堂本舗】さんの商品でしたが、あれ? パッケージが違うような? 少し気になりましたが、帰宅後ワクワクしながら箱を開けました。

小さな白いお餅に水色とピンクの線が描かれた、飴細工のように可愛らしいお菓子です。

そして見た目だけでわかる、餡のみずみずしさ。日付のハンコを見ると、製造がその日の早朝で賞味期限は翌日の夜まで。日持ちがわずか2日なので、生菓子の扱いだと思います。

味も食感も、ありそうでない絶妙な塩梅

まずは、まるまる一個をパクっと一口で頬張ります。※お年寄りやお子さんが一口で食べるには少し大きいかもしれませんので気をつけてください。

米粉100%でできたお餅はムチっとした食感。噛み締めるほどに、お米のほのかな甘みがじんわりと広がってきます。中に包まれたこし餡は、少し塩味が効いていて甘すぎないのが上品で好み。お餅と餡の割合もバランス良きです。

一見よくある和菓子のようで、実はどこにもない美味しさ。この味が忘れられず、滋賀に来るたび買い求める人がいるというのも納得です。

真実その1

これまで自分で買ってきたり、人からいただいたり、何度も口にしてきた【元祖莚寿堂本舗】さんの糸切餅。何も気にせずただパクパク食べていましたが、実はいろんなエピソードがあることがわかりました。

まず、以前と違うように思った箱の包装紙。ちょうどその包装紙に店の系譜が載っていたので気になって調べてみました。
・糸切餅の元祖として明治12年(1879)に創業し現在6代目
・初代から6代目までずっと女性だけが店主を担ってきた

どうやら6代目店主になったのち、昨年(2024年)にパッケージを刷新されたようです。以前の情緒ある包装紙も良かったのですが、より今っぽい感覚のデザインで「わ、可愛い!」と手に取りやすくなりました。

若い世代に向けたSNSなども上手に活用されていて、伝統の味は守りつつも時代に沿ったアップデートを重ねる「老舗の見本」みたいな良店だなぁと感心しました。

真実その2

お餅に描かれたカラフルな3本線の意味。糸みたいに細い模様だから糸切餅っていうのかな?ぐらいに全然分かっていませんでした。

実はこの縞模様、蒙古(モンゴル)軍の旗印だそう。鎌倉時代に二度にわたり九州に攻め入ったものの、二度とも酷い台風で船が沈み日本から撤退。取り戻した平和を喜んだ里人たちは、蒙古軍の旗印の赤青三筋の線を書き、弓の弦で断ち切って神社にお供えしました。それがやがて多賀大社に伝わり、名物餅になったのだそう。

そういえば歴史の授業で学んだような記憶がうっすらと。そうだ「蒙古襲来」だ、と思って検索したことを後悔。戦の最中のおぞましい絵図を目のあたりにして萎えました。ほんと戦争はダメ。いまある平和に感謝しながら、もう一個お餅を頬張りました。

禁断の食べ方を知ってしまった

糸切餅2日目。見たところ、まだまだお餅は柔らかそうでした。でも前日にたくさん食べたので、ちょっと変化が欲しい。というわけで「糸切餅の天ぷら」に挑戦してみることにしました。参道にある飲食店でも販売されていますが、まだ実際に食べたことはありません。

もったいないかもと思いつつ、天ぷら衣をからめて油へ投入。両面30秒ほどずつサッと揚げました。本来はフリッター風の分厚い衣に包まれているものが多いようですが、サクサクが好きなので今回は薄衣にしました。

揚げたてのアツアツを一口。う、ま~。

お行儀が悪くてすみません。うま~しか表現できなくて、ずっと繰り返していました。そもそもお米だけでできたお餅なので、美味しい揚げ餅になることは想像できたのですが、ここまでとは。

例えるならゴマのないゴマ団子。ゴマがないぶん、餅と餡の美味しさが際立つゴマ団子。そんな感じです。難しいことは考えずに、衣を通すだけで簡単に作れるので、そのまま食べきれなかった時はぜひ試してみてください。もちろんカロリーは爆上がりですが、それがどうしたと思える罪深き美味しさに出合えます。

さいごに

本来は多賀大社に参詣したご褒美?に持ち帰るはずのお土産を、今回は手軽に味わってしまいました。暖かくなったら、今度はしっかり現地まで足を運びたいと思います。

あとこれまでは、全国各地の銘菓も由来などを気にせずに食べていたのですが、今後はそのお菓子が作られた由来や歴史的背景なども知ってからいただこうと思いました。「なぜそのネーミングなのか」「なぜその素材を使っているのか」「なぜその色形なのか」いろいろ知ることでもっと味わい深くなりそうです。


元祖莚寿堂本舗 https://itokirimochi.com/
元祖莚寿堂本舗 instagram @maido_enzyudou/