クリーニング工場に潜入したら、想像以上に“システムの世界”だった【ヨシハラシステムズ】吉原保さん

クリーニング工場に潜入したら、想像以上に“システムの世界”だった【ヨシハラシステムズ】吉原保さん

2026.6.22彦根・湖東

まだダウン洗っていないのに夏が来そう…。

biwacommon編集部のモリモトです!

春かと思ってうかうかしていたら、気がついたら半袖の季節。
冬に着ていたダウンをまだクリーニングに出せていないというのに、夏が来てしまいそうです。

「クリーニングに持って行くの、ちょっと面倒だし…」「自分で洗うか…」と後回しにしたい気持ちは募るばかり。そんなめんどくさい!を、“システム思考の超合理主義社長”が解決してしまった滋賀の企業があるのだとか…。

【ヨシハラシステムズ】吉原保(よしはら たもつ)さん

滋賀県内におよそ30店舗を展開する「ヨシハラクリーニング」。滋賀に住んでいる方なら、一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。

その店舗を運営しているのが、彦根に本社を構える【ヨシハラシステムズ】さんです。今回は本社にお邪魔し、噂の“システム思考の超合理主義社長”こと、3代目社長・吉原保(よしはら たもつ)さんにお話を伺ってきました。

モリモト:さっそくですが、ヨシハラシステムズの成り立ちについて伺いたいと思います。

吉原さん:1959年(昭和34年)に祖父が創業しました。当時は店舗ではなく、個人のお宅を回る「御用聞き」のスタイルでした。2代目である父の代になると、スーパー内への出店を進め、事業を拡大していきました。

モリモト:そこから吉原社長が3代目として継がれるわけですが、昔から「いつかは家業を継ぐぞ!」という気持ちがあったんですか?

吉原さん:いや、そうでもなかったですね(笑)。ITに興味があったので、25歳から約10年間、自分でシステム会社を立ち上げて経営していました。その後、36歳のときに父が急逝し、事業を引き継ぐことになりました。
当時は社員も今ほど多くなく、決して順調とは言えない状況だったので「やれるところまでやってみよう!」くらいの気持ちでスタートしました。

1からすべて作り上げた、宅配サービス「せんたく便」って?

モリモト:それにしてもクリーニングとITってなかなか異なる業種ですよね…。家業のクリーニングを、ご自身の得意分野であるITに掛け合わせてみようと思ったのは、家業を継がれてすぐだったんですか?

吉原さん:そうでしたね。私が継いだ2008年当時は、企業が本格的にWeb活用を進め始めたり、ネット通販(EC)がようやく一般化してきた時期でした。
そこで、クリーニングのような『サービス』も、ネットで注文して宅配で届ける仕組みにすれば、これから需要が伸びるのではないかと考えて、宅配クリーニングの「せんたく便」を始めました。

「せんたく便」とは…
24時間365日、WEB上で予約できる宅配クリーニングサービス。集荷から配送まで一貫で、ダウンなどの衣類はもちろん、スニーカーや革靴、人形、浴衣、コスプレ衣装など、幅広いアイテムに対応しています。

吉原さん:当時は実店舗中心の事業だったので、どうしても来店いただけるお客様の数に限りがありました。そこで、全国へサービスを広げたいという思いがきっかけの一つです。

モリモト:とはいえ、そんな仕組みをゼロから作るのって、かなり大変そうですよね…。せんたく便のために自社開発されたシステムって、どのくらいの規模のチームと期間で作られたんですか?

吉原さん:それが…1人で作ったんですよ。大体1年ぐらいかかって…なかなかハードでしたね。

モリモト:え~っ!全部1人でできるものなんですか?それはもっとアピールしてくださいよ!

“合理主義”が生んだ、せんたく便の料金設計

モリモト: 一般的なクリーニング店だと、「Yシャツ◯円」「スーツ◯円」といった品目ごとの料金設定ですよね。せんたく便は「5点パック」「10点パック」のように、点数ごとの一律料金になっていますが、これには何か理由があるんですか?

吉原さん:最初は、注文時に商品ごとに料金を選んでもらう仕組みを考えました。ただ、自分がユーザーとして使う想像したとき、入力項目が多いとそれだけで面倒に感じると思ったんです。
それなら、点数だけで完結する仕組みの方がシンプルで分かりやすい。そう思って、この形にたどり着きました。

モリモト:確かに、注文時の選択工程がぐっと減りますね。もう一つ気になったのが、毛玉取りやシミ抜きなど、一般的に追加料金がかかる作業を無料オプションにされているのはなぜでしょうか?

吉原さん:そこはよく驚かれるポイントですね。
例えばシミがある場合、店舗であればその場で追加料金の判断ができます。ただ、せんたく便の場合は一度商品を検品したうえで、必要に応じてお客様へ確認する工程が発生します。そのやり取りが増えるくらいなら、最初から無料オプションとして設計したほうがシンプルだと考えました。

モリモト: なるほど…。お客様へのサービスというだけじゃなくて、工程そのものをシンプルにする発想なんですね。合理的だけど、結果的に利用する側もうれしい仕組みですね。

工場に潜入して見えた、クリーニング現場のシステム化

ーー特別に工場も見学させていただきました。

吉原さん:今がちょうど一年で一番の繁忙期で、冬物がどんどん入ってくる時期なんですよ。

モリモト:ダウンやコートがすごい数ですね。これだけの量が一気に届くと、どのお客さんの商品か管理するだけでも大変そうですが…。

吉原さん:そうですね。まず最初に、届いたすべての商品を検品し、撮影して管理番号を付けます。この番号で「誰の、どの商品か」を紐づけています。
さらに、その日の入荷・出荷状況や、商品ごとにどの工程まで進んでいるかもシステム上で管理しています。なので、「あの服どこいった?」「これ誰の商品やっけ?」みたいなことはないですね。

モリモト:実際に見ると、想像以上に管理が徹底されているんですね。

SDGsは後付け?!環境問題への本音

吉原さん:ここで、お預かりした商品をクリーニングしています。ドライクリーニングといって、水を使わないクリーニング店ならではの特殊な洗浄方法ですね。

工場内では、溶剤が回収できる乾燥機に切り替え、ドライクリーニングに使う溶剤の約8割を回収・再利用しているというるのだそう。

モリモト:それって、いわゆるSDGsの取り組みですよね?

吉原さん:もちろん結果としてはそうなりますが、正直に言うと、SDGsを意識して取り組み始めたわけではないんです(笑)。もともとは、揮発する溶剤を回収したほうがお得だな…と思って、機械を導入しました。
環境への取り組みを掲げることは大切ですが、それがコスト増につながってしまっては続けられません。経済的に無理のない仕組みがあってこそ、長く続けられるものだと考えています。

モリモト:確かに、無理なく続けられる形であることが理想的ですよね!

吉原さん:ちなみにこれが、実際に回収された溶剤です。※写真右下

モリモト:こんなに綺麗に回収できるんですね!

畳まず届く!せんたく便専用のオリジナル箱

モリモト:洗い終わった後も、システムで管理されているんですか?

吉原さん:そうですね。クリーニングが終わった服は、ハンガーについたラベル番号を機械が読みとって順番通りに並べ替えてくれるんです。

モリモト:おお…すごい…!発送はこの大きい箱で行われるんですか?

吉原さん:そうです。これはせんたく便オリジナルの段ボールで、ヤマト運輸さんと共同開発しました。ハンガーを引っ掛けて固定できるようになっていて、綺麗にプレスした状態で全国へ発送しています。

モリモト:畳まれていない状態で戻ってくるのは嬉しい!箱にまで、工夫が詰まっているんですね。

滋賀から全国へ、せんたく便が届けるもの

モリモト:「滋賀を代表する企業100」にも選ばれていますが、滋賀の企業として、地域に対してどんなことを意識されていますか?

吉原さん:何年か前から、彦根市のふるさと納税の返礼品としてせんたく便を提供しています。そこで宅配でお届けする袋にひこにゃんをプリントするようにしたんですよ。
そうしたら、ふるさと納税のレビューに「ひこにゃんの箱が可愛くて、これをきっかけに彦根に遊びに行きました!」なんてコメントをいただくようになったんです。

モリモト:なんと!ひこにゃん効果、影響力がすごいですね……!

吉原さん:せんたく便は全国のお客様に向けたサービスなので、自分たちにできる形で、滋賀の魅力を発信していけたらと思っています。

システム屋で、クリーニング職人。

今回お話を伺っていて印象的だったのは、いい意味で、きれいごとがないことでした。

「SDGsは後付けですね(笑)」「言ってしまえば会社のためなんです」

そんな率直な言葉のひとつひとつに、むしろ不思議な説得力があり、思わず何度も「確かに」と頷いてしまいました。

また、システム思考で合理性を突き詰める吉原さんですが、システム化することがすべてではないとも話してくださいました。どれだけ工程を自動化しても、最後に衣類をきれいに仕上げるには、人の手による作業が欠かせないのだそうです。

「クリーニング職人として、一番腕が鳴る瞬間はいつですか?」と伺うと、「やっぱり、しみ抜きで汚れが落ちる瞬間が気持ちいいですね。」と、迷いなく答えてくださいました。どんなに汚してしまっても、安心して任せられそう。そんな頼もしさを感じるひと言でした。

クリーニングの「めんどくさい…」に悩む全国の同志のみなさん。ぜひ一度、せんたく便を利用してみてはいかがでしょうか。


【ヨシハラシステムズ】
〒522-0026滋賀県彦根市大堀町380-1
公式サイト:https://yoshihara-cl.co.jp/