魚のゆりかご水田米

人・環境・生き物の共存が生む琵琶湖の米「魚のゆりかご水田米」

弥生時代から愛されてきた日本の主食

♪Boy Meets girl ~ ロマンスの神様どうもありがとう~~♪ 今日もお風呂場に響き渡る息子の大きな唄声。自分が大学生の頃に流行っていたヒット曲がなぜ今!? と最初は戸惑いましたが、どうやら若者世代で90年代の流行歌が再ブレイクしているらしいです。スピッツ「チェリー」とかもね。懐かしいような、時の流れに震え上がるような、複雑な心境です。
ところで、ロマンスの神様@広瀬香美はかなりパワフルな難曲ですが、息子はお腹から声を出して高音域まで力強く歌い上げています。それを聴いていると、毎日あれだけガツガツお米を食べてりゃね~、そりゃあバカでかい声も出るよね~、と妙に納得してしまいます。お米=主食=エネルギー源なので当たり前ですが、日本古来からの稲作信仰的な思想なのか!? 私個人的にはパンや麺など小麦粉から摂取する炭水化物よりも、白ごはんの方が体の深部に揺るぎないパワーを与えてくれるイメージがあるのですよね。というわけで、かなり強引な入りでしたが、今回書きたかったテーマは「お米」です。

実は多い、炊き立てごはんが一番のご馳走という人

一番好きな食べ物は何?という質問に、必ずいるのが「白ごはん」と答える人。あのマツコさんも以前テレビ番組で「炊き立ての白ごはん」を一番のご馳走にあげていましたし、私の甥っ子などは「白ごはんのおかずは白ごはんにして」という迷言を残すほど白米を愛しています。そういう人は味や食感など白米の“美味しさの違い”にも敏感で、お米の産地や銘柄のことにも詳しい気がします。そうじゃない人にとっても、日本には全国各地に水田の環境や栽培の方法にこだわった多様なブランド米があるので、改めて好みに合ったお米を食べ比べてみるのも楽しそうです。
地産地消好きの我が家は滋賀県産の「近江米」一択ですが、その近江米にも実は様々な銘柄があり、炊き上がった際の匂いや口に含んだ時のねばりが違うのはなんとなくですが分かります。そして、次回ぜひ試してみたいと思っているのが「魚のゆりかご水田米」というお米。最初は意味難解なネーミングセンスやなぁと思ったのがこのお米を知るきっかけでしたが(ごめんなさい)、きちんと調べてみるとその名付けの意味を含めて素晴らしい栽培背景があることが分かりましたのでご紹介します。

「魚のゆりかご水田プロジェクト」とは?

かつて琵琶湖とつながる湖岸の田んぼは、エサとなるプランクトンが豊富で水が暖かいことから、コイ・フナ・ナマズなどの産卵・成育に格好の場所(魚の赤ちゃんによって心地よい“ゆりかご”)でした。いま滋賀県が推進している「魚のゆりかご水田プロジェクト」は、琵琶湖から湖魚が溯上し田んぼで産卵できるよう農業用の排水路に魚道を設置することで、この昔ながらの水田環境を取り戻す取り組み。そしてそこで栽培されたお米が「魚のゆりかご水田米」です。
“ゆりかご”の役割を持つ水田は、やさしくなければなりません。生産者さんは、農薬や化学肥料を通常の50%以下に減らす「環境こだわり農業」を実践することはもちろん、除草剤を使用する場合は水産動植物(魚類、甲殻類)に影響を及ぼすとされている除草剤を除いたものを選ぶなど、環境保全のためにさまざまな工夫を重ねておられるのだそうです。琵琶湖にも魚にも、そして人々にもやさしい農法で、通常より手間ひまかけて栽培されたお米。どんなに滋味深いのだろう?と想像するだけで、口に運ぶのが楽しみでなりません。
いつも店頭に置いているわけではないようなので、次回JA直売所で見つけたら即購入したいと思っています。

「世界農業遺産」に認定された琵琶湖システム

さて、この「魚のゆりかご水田」については、見逃せない関連トピックがあるので紹介させてください。2022年7月18日に、滋賀県琵琶湖地域の農林水産業が「琵琶湖システム」として国連食糧農業機関(FAO)の『世界農業遺産』に認定されました。『世界農業遺産』とは、社会や環境に適応しながら何世代にもわたり発達し形づくられてきた伝統的な農林水産業と、それに関わって育まれた文化、景観、生物多様性などが一体となった世界的に重要な農林水産業システムを認定する仕組みです。現在、世界で65地域、国内で13地域が認定されています。(2022年7月18日現在)
「琵琶湖システム」は、琵琶湖周辺の農業、琵琶湖の伝統漁業、山林緑化や水源林の保全、独特の食文化などから形作られ、そのシステムが1000年以上にわたって受け継がれている点が評価されたそうです。人や生きものが安心して暮らせる田んぼを取り戻す取り組み「魚のゆりかご水田」も認定に大きく寄与しているということでした。素晴らしいですね!