ビワイチという言葉がない頃の話

199X年夏の終わり

今年も何もせず夏が終わっていくのかと僕は一人で空虚な気持ちを埋める方法を探っていた(中二病だと思います)。何かの本で誰かが「一歩踏み出すことで何かが得られる」と言ってたのを思い出し、明日、自転車で琵琶湖一周しようと決めた。

夜が明ける前に家を出た

当時ママチャリしかなく、21段変速の快適さもまだ知らずの若かりし頃。無謀にも麦わら帽子にTシャツとジーパン。リュックにはペットボトルのお茶。
自分の中で何か得られるものがあるかもと希望を持って。というよりこの虚無感から抜け出したかった。と、勢いよく飛び出したもののちょっと後悔している。
走り出して1時間。太陽が昇り始めた。湖岸を反時計回りに感覚的にはけっこう進んでいるはずの僕は、今まだ琵琶湖の下の細くなってる所にいる。

ペダルをこぎ続けた。
琵琶湖大橋の付近を通り過ぎたところで、手持ちの簡易な紙地図を見たらまだまだ先が長いことに愕然とした。

昼もかなり過ぎた頃

ルートの4分の1あたりである彦根城近くまでたどり着いた。
腹が減った。とにかく何か食事が出来て涼しいところで休憩したい。ほんとはもう帰りたい。
湖岸道路から少しそれて、民家の中に喫茶店を見つけた。カランコロン、とドアを開けたら昭和の雰囲気。そんなまさかですが、テーブルがゲーム機になっているのでした。確かそうだったと思う。

カレーライスかオムライスか忘れたけど腹は満たせた。涼しい店内で飲んだアイスコーヒーが美味しかったのを覚えている。つい長居してしまい、1時間ほどの休憩でエネルギーは半分くらい回復した。一度休憩すると腰が重い。

日が暮れて辺りが薄暗くなる頃

琵琶湖の最北端の付近に来ていた。
実は1日では絶対周れないと思い、高島市の友人のエディー宅に泊まらせてもらう約束をしていた。
早く着いて休みたい。もう足と尻に限界が来ていた。真っ暗な山道をかけ昇る。トンネルにさしかかる。
奥琵琶湖の峠は越えたのでもうすぐだ、、、 !?
真っ暗な道が続き、不安になって地図を見ると反対方向に進んでいる!! すぐさま来た道を引き返し、何とか分かれ道まで戻る。
今度は正しい道を進んだ。すると街の灯りが見えた。ゴールは近い。


コンビニで晩ご飯と缶ビールを買った。公衆電話からエディーに電話した。
「遅くなってごめん! もうちょっとで着くわ、待っててな」

あとがき

何かせなな、でも何もないなぁ。と自分が何者でもないことが不安で、何か動いたらそれが払拭できるかも?と、もがくが結局何もなく同じ場所でうろうろしている。あの時は何かが得られた確信はなかったが、何十年経って、やってよかったなと貴重な思い出の一つになっていたことを実感した。人生は短い。その時しかできないことをやってみたい。


次の日は、びわ湖タワーの近所の友人ダンディーの家に昼頃着いてゲームをして夕方には無事ゴール!