大津駅前の広場から湖岸へと続く大通りには、ここ5年ほどで感度の高い新ショップが増え続けています。2020年にオープンしたチョコレート専門店【THE SMILE CHOCOLATE】もその一つ。
ぼんやりしていると通りすぎてしまいそうな小さな店構えだけれど、入り口のガラス扉を開けるとそこはワクワクがぎっしり詰まった別世界。ずらっと並ぶ色とりどりの表情豊かなチョコ菓子に囲まれて、おのずと笑顔が生まれる素敵なお店です。
メイン商品は手のひらサイズのマンディアン。薄くのばしたチョコレートに、ナッツやドライフルーツなどがトッピングされたお菓子です。ベースのチョコレートは、ホワイト・抹茶・ミルク・ダーク…etc.と幅広く、カカオの産地や含有量もさまざま。
さらにどんな素材を組み合わせるかによって無限の可能性が広がり、だからこそショコラティエのインスピレーションやセンスが問われそうなお菓子です。
どんな人が作っているの?オーナーショコラティエの吉野智和(よしのともかず)さんにお話を伺いました。
38歳からチョコレート職人を始めたという吉野さん。以前は、地域を活性化させるリノベーションスクールの講師などを務めていたという経歴の持ち主です。
ーーー吉野さん:
まちづくりを考えるなかで気づいたことがあって。ケーキとか洋菓子とか、子どもたちがお小遣いで気軽に買いに行けるようなお菓子屋さんが町からなくなったなぁと。それで、もともと興味があったこともあって、10年前にチョコレート専門のお菓子屋さんになりました。
チョコっていろんなものと相性がいいんです、懐が深い。「マリアージュ」と言っていますが、組み合わせることでこれまで気づかなかった素材の美味しさが引き出されることがある。チョコを間口として違った角度から素材の魅力を伝えてあげられるのがいい。役割を担える感じがあります。
カラフルなマンディアンは、どれも281円(税込)。2025年から原材料費高騰のため320円(税込)に値上がりするそうですが、それでも商品のクオリティを考えるとかなりの低価格。
ーーー吉野さん:
ワンコイン握りしめて母の日のプレゼントを買う、とか。そこの理想は崩したくないから頑張っています。
吉野さんが使用するのはカカオ豆の純粋な美味しさが際立つピュアチョコレート。植物性油脂を使わないことから、テンパリングと呼ばれる作業(滑らかな口当たりにするために、チョコを一度溶かして再度固める温度調節作業)が難しくなります。
ーーー吉野さん:
最初はそれぞれに融点が違うカカオの6種類の結晶構造を勉強するところから始めて。なかなかカカオバター(油分)が固まらなくて苦労しました。試行錯誤を繰り返して…でも辞めようとは思わなかった。チョコの純度を下げないお菓子作りがしたかった。だってその方が「おいしい」ですから。天気や気温で変化する仕上がりの様子を見ながら、人の手でやっているからこそ出せる味だと思います。
未だにわからないことは出てきますよ。その度に勉強して。やっぱりチョコレートづくりは面白いですし、素材の組み合わせも考え出すとキリがない。だから綺麗なストーリーとか難しいことは考えずに「おいしい」を基準に作っています。
背伸びして、よく見せようとしない。ほっと和む、柔らかな空気感。吉野さんの人柄そのままが、チョコレートづくりにも現れているように感じました。
せっかくなので、たくさんあるマンディアンから吉野さんにおすすめを選んでもらいました。
ーーー吉野さん:
これと、これです。すぐ近くにある地元の老舗「中川誠盛堂茶舗」さんの抹茶とほうじ茶を使っています。それから、これも。大津の「おごとハーブガーデン」さんとコラボした商品で天然ミントが入っています。
地元のものを中心に滋賀県産の材料を積極的に使っているそう。味に納得しているのはもちろん、一番の理由は「一緒にエリア(地域)を盛り上げていきたい」から。
自分たちのお店だけが良ければいい、という考え方は古いしダサい。これまでの仕事で培ってきた「人が集まるまちづくりとは?」の観点から、もっとグッと引いた視点で捉えているビジョンがあります。
ーーー吉野さん:
まずは、その地元の人が楽しんでいることが大事。地元の盛り上がりが外に漏れ出ていく…観光客だってそういうところに行きたくなりますよね?だから、うちがエリアを創るためのアンカー的な存在になりたい。その考え方で、発信力を持って運営していく。そしたら、マグネット的におもしろいお店や人が集まってくるのかなと。
おすすめ3種プラス見た目の可愛さで選んだ2種をいただきました。※以下は個人の感想です
■抹茶チョコと黒豆。(店主recommend!)
ゴロンと大きな黒豆入り。お茶マニアな「中川誠盛堂茶舗」店主にお点前用の本格的な抹茶を厳選してもらったそう。信楽の銘茶・朝宮茶の風味が格別です。
■ほうじ茶チョコと黒豆。(店主recommend!)
うわ、香ばしっ!焙煎された茶葉がチョコに深いコクをプラスしています。鼻からほうじ茶の薫りが抜けるような立体感のある美味しさ。
■チョコミントとライムクリスピーと、あとパチパチキャンディ。(店主recommend!)
見た目にお子さま向けかと思いきや、天然ミント(ハーブ)の苦みが走る大人のお菓子。あ、なるほど「モヒート」をイメージしているのか。
■ホワイトチョコといちごと、あとピーカンナッツと。
ホワイトチョコのまったりとした甘さを、イチゴの酸味がキリッと引き締めています。「マリアージュ」を実感できる組み合わせ。
■焦がしきな粉チョコレートとかの子豆、あとあられ。
ちっちゃな五色あられが可愛すぎてチョイス。じわじわっときなこが広がっていく、どこか懐かしく優しいテイスト。
お店にはマンディアン以外にも、おしゃれにパッケージングされたチョコ菓子が所狭しと並んでいました。気軽に買える日々のおやつにも、ちょっと気の利いたプレゼントにも、町を愛するチョコレート屋さんの笑顔になれるお菓子をどうぞ。
【THE SMILE CHOCOLATE】
住所:〒520-0041 滋賀県大津市浜町9-25
営業時間:11:00~19:00
定休日:水曜日
WEBサイト https://thesmilechoco.shop-pro.jp/
Instagram @the_smile__chocolate_shiga