自由にものづくりを続ける陶芸作家【楡さとみ】さん

自由にものづくりを続ける陶芸作家【楡(にれ)さとみ】さん

2026.4.30広域

これ、なんでしょう?

biwacommon編集部のモリモトです!
このトゲトゲした不思議な形の物体、何かわかりますか?

植物の種?置物?撒菱(まきびし)…?

…実はこれ、植物を飾るための一輪挿しなんです!

今回は、このユニークな一輪挿しを生み出している滋賀県出身の陶芸作家【楡(にれ)さとみ】さんにお話を伺いました。

滋賀県出身・山梨在住の陶芸作家【楡さとみ】さん

現在は山梨県を拠点に活動する、滋賀県出身で陶芸作家の【楡さとみ】さん。フラワーアレンジメントの講師としても活躍するなど、多彩な表現で活動されています。

10代の頃に、テレビで目にしたKENZO(ケンゾー)のファッションショーをきっかけにアパレルの世界に興味を持ち、文化服装学院ファッションデザイン科へ進学。

卒業後はデザイン事務所で経験を重ね、COMME des GARÇONS(コム デ ギャルソン)にて企画・生産に籍を置き、約10年にわたり活躍されました。

アパレル業界からの転身。陶芸との出会いとは?

ちょっぴり珍しい経歴の楡さん。
前職では、会社と家を往復する日々が続き、「何か新しいことを始めたい」という思いが次第に強くなっていったそうです。

ーー陶芸との出会いはいつだったんですか?

趣味で通っていたデッサン教室で、「陶芸をやってみないか?」と誘われたことがきっかけでした。最初は「陶芸か…」と、あまりピンときていなかったんですけどね〜(笑)

ですが、いざ始めてみると失敗してもやり直せる粘土の自由さに惹かれました。服や、バッグ、靴は一度生地を裁断してしまうとやり直しがききませんが、粘土は何度でも作り直すことができますから。

「折れていてもいいから…」から始まったシリーズ作品

ーーそこから本格的に陶芸を始められたんですね!

そうですね。ただ、最初から仕事にしようと意気込んでいたわけではなく、あくまで趣味として楽しんでいました。

そんな時、知人から「折れていてもいいから作品を譲って欲しい。」と相談を受けたんです。作品づくりをしてきて、そんなことを言われたのは初めてで。そこまで魅力を感じてもらえていることが嬉しかったですね。

ーー折れていてもいいから…ってよっぽど素敵な作品だったんですね!すごく気になるんですが…どんな作品だったんですか?

それが、このトゲトゲの一輪挿しです。危なっかしいでしょ(笑)
トゲがあることで置き方の自由度も高くって。植物を斜めに置いたり、まっすぐ立てたりと、さまざまな飾り方ができます。花器の角度を変えることで、植物の見え方が変わるのがこの一輪挿しのポイントです。

このシリーズを作り続けるうちに数も増えてきたので、取り扱っていただけるお店を探し、販売を始めました。

植物から縄文…広がり続けるインスピレーション

トゲトゲとしたフォルムは、“オナモミ”(いわゆるくっつき虫)からインスピレーションを得て生まれた作品なんだそう。ほかにも、苔をイメージした作品や、花びらのフリルを思わせる造形など、植物から着想を得た作品が多いのが楡さんの特徴です。

ーー作品のコンセプトは、植物から着想を得たものがほとんどですか?

植物コンセプトの作品は多いですが、最近は少し変化もあって…。例えばこれは、縄文土器からインスピレーションを得て制作した作品です。

今住んでいる山梨県って実は、縄文土器が日常的に目に入る環境なんですよ。縄文時代の土器はとてもおおらかで、その造形に強く魅力を感じています。模様には祈りやスピリチュアルな意味が込められていて、そうした背景にも惹かれるんです。

最近は、「現代版の縄文土器を作りたい」と思っています!まだ具体的な答えは出ていないんですけどね。

コンセプトはものによって異なりますが、花や植物を挿したときはそれらと一体化する造形物として、花や植物がないときには日常空間を彩るオブジェとして成り立つように意識しています。植木鉢であれば、そこに入る植物の個性を引き立て、全体として一体感が生まれるような造形を心がけています。

やっぱり滋賀が好き!ものづくりの原点と滋賀愛

ーー幼少期に滋賀県で過ごされた体験が、作品に反映されていると感じることはありますか?

もともと植物が好きなのは、滋賀で家庭菜園に取り組んでいる家庭に育ち、植物が身近にあったことが大きいと思います。「仏壇の花、取ってきてー」と言われることも日常的でしたね(笑)

ーー現在の作品に使われている土も、信楽産のものだと伺いました。作りやすさが違うんでしょうか?

そうですね。信楽の「山中陶土」という粘土屋さんから購入しています。
作りやすさというよりも、「やっぱり滋賀の土を使いたい」という気持ちが大きいですね!自分の原点でもある場所の素材を使うことで、自然としっくりくる感覚があります。

それに、単純に滋賀が好きなんですよ(笑)。
車で移動しているときに、ナビで『滋賀県に入りました』と流れると、「わ〜滋賀だー!」って思わずテンションが上がってしまって。そんな様子を見て、娘にも「やっぱり人って、生まれ育った場所の近くがいいんだね〜」と言われました(笑)。

こだわり抜いた一点ものを

ーー今後どんなことにチャレンジしてみたいですか?

びわ湖をテーマにした作品を作ってみたい、というのは今年の目標のひとつです。どんな作品にするかはまだ模索中ですが、自分なりの表現で形にしてみたいと思っています…どんな作品がいいですかね〜?

あとは、オーダーメイドの制作にも挑戦してみたいですね。
お客さんの要望を受けて、それを自分のフィルターを通して形にしたときに、どんな作品が生まれるのか試してみたいです。

植物が好きで、「自分だけのものが欲しい」と思っている方に向けて、特別な一点ものを届けられたらいいなと思っています。

自由に、追求したものづくりを

そして、今回お話を伺って印象的だったのは、作品の印象とは少し異なる、楡さんのおおらかな人柄。

「こんなことをやってみたい」「こんな作品も面白そう」そんなアイデアが自然に生まれ、それを形にしていく行動力。人との会話や身の回りの環境も、作品づくりに取り込まれているようでした。

取材中も「どう思いますか?」とこちらに問いかけてくださる場面が多く、
自分のなかだけでは完結しないものづくりへの真摯な姿勢が印象に残りました。
楡さんの生み出す作品は、これからも自由に広がっていきそうです。

滋賀県内では、以前biwacommonで取材させていただいた「bio plants(ビオプランツ)」さんで取り扱いがあるそうです!ぜひ実際に手に取って、その佇まいを感じてみてはいかがでしょうか。

楡さとみ 
公式サイト:https://satomi-nire.com/feature/satomi-nire_vase/
Instagram:@satomi_nire