こんにちは。biwacommon編集部のニシオカです。
突然ですが、先日ハリウッドスターのブラッド・ピットが新作映画『F1/エフワン』公開を記念して来日されました。
私はブラピの大ファンなので、来日中の様々なインタビューもチェックしていたのですが、その際、彼の一番好きな日本食が「白身魚のポン酢がけ」だということが判明。
白身魚の…ポン酢がけ…?
なにゆえ、そんなニッチなものを……?
妙に気になった結果、あわよくば自分も「新鮮でおいしい白身魚にポン酢をかけて食べてみたい!」という衝動に。ちょうど以前から会社の近くにおいしいお魚屋さんがあると聞いていたので、この機会に行ってみることにしました。

JR石山駅に程近いところにある石山商店街。毎年夏には夜市が開催され、たくさんの人で賑わう昔ながらの商店街です。その商店街の一角に、今回ご紹介する【魚辰】さんはあります。
お店に行く前にインスタグラムのアカウントを拝見したのですが、美しいお刺身の写真から伝わってくる”シズル感”に完全にやられました。嗚呼……早く食べたい……!
商店街の広い通りから一筋住宅街に入ると、すっきりとした青色の建物が見えてきました。お店の隣に数台停められる駐車場があるので、車で訪れても安心!正面の入り口前から、ガラス越しに店内の様子を窺うことができます。
ところで筆者ニシオカ、そもそも路面の”お魚屋さん”に行ったことがないので少し緊張してきました…。

店内に入ると目の前に広がる、魚、魚、魚!
正面に焼き魚やお惣菜のコーナー、奥に冷蔵コーナーが設けられ、お刺身やお惣菜が所狭しと並べられています。インスタグラムに載っていた写真のとおり、どのお魚も艶やかで、見ただけでも新鮮さが伝わってきます。
驚くのはその種類の多さ!この日は「あん肝」や「くじらベーコン」や「甘えび漬け」など、スーパーの鮮魚コーナーではなかなか出会えないのでは……?といったレアな品もありました。お刺身の盛り合わせはいろんなお魚が入っていて、とっても色鮮やか!お腹が減ります。
さらに、ひじき煮や白和えなど、お魚系以外のお惣菜も豊富なので、スーパーに行かなくてもここでご飯の献立が完結しちゃう。助かる~!
ちなみにお惣菜は魚辰さんで手作りされているそうで、特にポテトサラダが人気なんだとか。南蛮漬けは魚の小骨まで取ってくださっている手の込みよう……!

今回、店主の瀬尾さんから貴重なお話をたくさん伺うことができました。営業時間中でしたのでお魚を捌きながら対応してくださったのですが、その見事な手際の良さに感嘆!お店は先代のお父様から受け継がれたとのことで、約60年の歴史があるそうです。
──ここが【魚辰】の魅力!と思っているところは?
瀬尾さん「業界的に僕らは絶滅危惧種というか、魚屋さん自体がなくなってきています。そんな中でちょっと珍しい魚を売っていたり、 おつくりの盛り合わせとかも人数に合わせて注文後に用意したり。一人暮らしとか若いご夫婦とか、なかなか魚が食べづらい人もいるので、そういう人たちにも利用していただきやすい品揃えも魅力かなぁ」
──お客さんはご近所のなじみの方が多いですか?
瀬尾さん「昔からのお客さんはもちろん、ラインナップが特殊なこともあってか近隣の飲食店さんが買いに来てくれることもありますね」
──お魚の仕入れはどちらで?
瀬尾さん「京都市中央卸売市場です。朝3時半くらいには起きて、セリの時間に合わせて買いに行って、魚の状態を見て自分の目利きで選んでいます」
──個人のお魚屋さんで、このラインナップでって、めちゃくちゃ貴重ですよね。
瀬尾さん「まあ、父親に教えてもらったやり方を特に変えることなくやってるだけです(笑)。お客さんのニーズに合わせてるというよりは、もうこのスタイルしかできないから、昔ながらのまんまをずっとやり続けているような感じですかね」
──今の時期、ポン酢でさっぱり食べるのにおすすめのお刺身があればいいなぁと思いまして……。
瀬尾さん「今なら生のカレイやね。生のカレイは他ではなかなかないと思いますし、うちでもあったらラッキーかな。あとはスズキもおすすめです」

魚辰さんでは予算に合わせて1人前〜でもお刺身の盛り合わせを作ってくださいます。
せっかくなので私も盛り合わせをお願いしたところ、ちょうどおすすめのカレイの仕入れがあったので、そちらも入れていただけることに!その他にもマグロやイカなど、いろんな種類の海産物が入っていて、彩りが豊ですごく美しいです。(画像は2人前)
今回はその中からいくつか抜粋して食レポをしてみました。

まずは本命のカレイ。こちらはポン酢をかけていただくことにしたのですが、そういえばお刺身にポン酢をかけて食べるのって初めてかも…?一体どんな感じなんだろう?と期待でワクワク。
見た目は透き通るような白身にほんのり光沢があり、その鮮度の高さが伝わってきます。
ポン酢をかけていざひと口!
しっとりとした舌ざわり、心地よさを感じる程よい弾力、まさに「活きの良さ」が味わえる食感です。生臭みなんて全くなく、淡白な味わいの中にもしっかりと旨味が感じられ、噛むごとにじんわりと甘みが広がります。
ポン酢の爽やかな酸味との相性はピカイチ!カレイの上品な味わいを引き立ててくれました。夏らしくさっぱりとしつつも後を引くおいしさに感動です……幸せ~!

続いて、関西では夏の味覚でおなじみのタコ。実は私、海産物の中でも特にタコが好きなので、今回の盛り合わせに入っていて心が躍りました。
つやっとした白身に赤紫のふちどりがあって、涼しげな存在感を放っています。ひと口食べればまず感じるのはタコ独特の噛みごたえ。タコはふにゃふにゃでも物足りないし、かたすぎると食べづらいですが、ちょうどいい絶妙な柔らかさ……!そしてこのぷりっとした弾力がたまりません。
タコってただの淡白な味かと思いきや、実はほんのりと甘みがあって、しっかり海の旨みが詰まってるんですよね~。その自然な甘さがワサビ醤油と合わさると一層引き立ちます。

そしてカンパチ。肉厚な身はほんのりとピンクがかっていて、血合いの赤と合わさって自然な美しさがあります。光を反射するその姿からも、こちらも鮮度は抜群!
ひと噛みした瞬間、じんわりと脂の甘みが口の中に広がっていきます。青物のお魚はこの”脂”が魅力のひとつですよね。
決してくどくないのにしっかりとしたコクがあって、ワサビの辛さが少し鼻を抜けたあと、醤油の香ばしさと身の甘みが合わさって、まさに絶妙のバランス。脂の多い魚なのに、食べ終わった後に全く重さを感じませんでした。

鱧(はも)と言えば関西では夏の風物詩!
かく言う私も夏になると必ず食べに行ったり、家で天ぷらにしたりと楽しんでおります。お惣菜コーナーに置かれていた鱧焼きを目の当たりにした瞬間、これは買わざるを得ないでしょ!と手に取ってしまいました。
瀬尾さんに食べ方を伺ったところ「少しお酒か水をふりかけて、電子レンジであたためてください」とのことでしたので、今回は水をかけてから500Wの電子レンジで30秒ほどあたためてみました。
ふっくらと焼き上がった肉厚な鱧。こんがりとした焼き目に、立ち上ってくる食欲をそそる香ばしい香り。甘辛い醤油ダレがしっかりと絡んでいて、照りのある仕上がりがたまりません。
ひと口含めば中はふわっと柔らかい身が口の中でほどけていきました。味わいはとても上品で、鱧のやさしい甘みがまず広がります。そこに、醤油ダレのしっかりとしたコクと香ばしさが加わって、甘すぎずしょっぱすぎず、まさにちょうどいい味付け。焼きの香ばしさとタレの旨味がマッチしていて、箸を運ぶ手が止まりませんでした。
これ絶対お酒との相性も最高なんやろな……と仕事中なのに思わずお酒が飲みたくなってしまいました。いかんいかん。
素材の持ち味と丁寧な職人仕事、まさに「旬を食べている」と実感できる味わいでした。

今回いただいた通常のお刺身の盛り合わせはもちろん、今の時期は手巻き寿司用にお刺身を買われる方が多いんだとか。夏に食べる手巻き寿司、最高ですもんね。
魚辰さんでお願いすると手巻き寿司用の形に切っていただけるのですが、確かに普通のお刺身より細長くカットされていて巻きやすいようになっています。
「お子さんは手巻き寿司よろこぶんよ。自分で巻いて食べられるの楽しいもんね」
そう言って気さくに話しかけてくださったのは、瀬尾さんのお母様。
昔からお食い初めの鯛を頼まれた際には手書きのメッセージカードをお渡しされていることなど、先代の頃から真心を大切にされてきたエピソードを聞くことができました。個人店だからこその心遣いが心に沁みますよね。

夕方近くなるにつれ、続々とお客さんが来店。おそらく常連さんが多いと思われるのですが、地元の方々に愛されているお店なんだなぁということが伝わってきてあたたかい気持ちになりました。
瀬尾さんが着ているシャツには、「都会の中の小さな漁港」という言葉が印字されています。このキャッチフレーズは先代のお父様が考案されたそうで、瀬尾さんは「石山で”都会”っていうのはちょっとしたシャレやと思うけどね(笑)」と話されていました。
漁港とは、本来「漁業を営むための港」を意味する言葉ですが、魚辰さんは海なし県である滋賀にとってはまさに漁港と言える存在!茶目っ気たっぷりの素敵なキャッチフレーズですよね。
昨今、様々な事情から魚離れが進んでいますが、「街のお魚屋さん」がいてくださることで、お魚を身近に食べられる機会があるのは嬉しいです。皆さんも新鮮なお魚が食べたくなった時はぜひ【魚辰】さんに行ってみてください!お魚との素敵な出会いがありますよ。
ちなみに私は「次に行く時は私好みのお刺身をたくさん買って盛り盛り海鮮丼を作って食べたい……」という野望を抱いています。
【魚辰】
住所 〒520-0855 滋賀県大津市栄町9-14
営業時間 10:00〜19:00
定休日 水曜日
Instagram:@uotatsu914