自然と人が共存する里山【叶匠寿庵 寿長生の郷 】

自然と人が共存する里山【叶匠寿庵 寿長生の郷 】

2025.5.22大津・草津

菓子作りの原点

biwacommon編集部アヤです。

5月の良く晴れた日、同じ編集部のブルさんと、【叶匠寿庵 寿長生の郷(かのうしょうじゅあん すないのさと)】を訪れました。

叶匠寿庵といえば、私がまだ幼いころ、母が好んで買いに行く和菓子屋さんだったのを覚えています。店内には綺麗な和菓子が並べられ、子どもながらに「お行儀よくしなくては。」と思ったものです。

6万3千坪の広大な郷内には叶匠寿庵本社と工場があり、菓子の原料を育て、そして菓子が作られています。菓子作りの原点は「農」にあるとの思いから山を開墾し、今年で開苑40周年を迎える寿長生の郷を散策していきます。

心躍る朝定食

本日の楽しみの一つ、梅窓庵(ばいそうあん)の「丹波の美味しい卵と本枯節の朝定食」。この朝定食のために、しっかり朝ご飯を抜いてきた私たちの足取りは軽く、気持ちもはずみます。

朝定食をいただける古民家には大きな囲炉裏があり、まるで日本昔ばなしの様な雰囲気。囲炉裏を眺めながら今か今かと朝定食を待ち侘び、さあいよいよご対面です。

運ばれてきた朝定食は、なんとも美しい卵かけご飯。水菜の浅漬けがのったご飯の真ん中には、つやっと光る卵黄。その周りには、大きく削られたたっぷりの本枯節がふわふわ揺れて今にも飛んでいきそう。

謎に思ったのは、大きめの容器に入って一緒に出てきた梅昆布茶です。店員さんによると、どうやら卵かけご飯を味わって、途中からお好みで梅昆布茶をかけるようなのですが、卵かけご飯に梅昆布茶をかける想像ができないのでちょっと不安です。

たかがTKG、されどTKG

まずは、お醤油をかけて卵かけご飯でいただきます。卵かけご飯は、だし醤油か、秘伝の醤油のどちらかをかけて食べます。だし醤油も捨てがたいですが、やはりここは秘伝の醤油で!

すでに秘伝の醤油をかけて卵かけご飯を頬張っている隣のブルさんから、「おいしっ!!秘伝の醤油むっちゃいい!」の声が。

私も慌てて一口。

なるほど、さすが秘伝!こちらにして大正解!!少しとろみがある甘い秘伝の醤油が卵かけご飯にぴったりです。そして、水菜の浅漬けが甘くてコクのある卵かけご飯のいいアクセントになっています。

美味しさのあまり、しばらく無言で卵かけご飯を頬張り続け、半分程食べたところでブルさんから一言。「梅昆布茶かけてみます。」

卵かけご飯&梅昆布茶の共演に躊躇する私と違い、勇気あるブルさんの反応を見てから梅昆布茶をかけるか決めようと小ずるいことを考えていた時、「意外!美味しいです!!」の声が。ブルさんのその言葉を信じて、私も恐る恐る一口。

これは!!新発見です!
梅昆布茶に溶け出した卵のコク、ほのかに感じる梅の風味がなんとも上品なお茶漬けに仕上がっています。身をもって体験してくれた勇気あるブルさんに感謝です。

そして驚くなかれ。
この朝定食には、叶匠寿庵の代表銘菓「あも」が付いて660円で楽しむことができるんです。この日も、朝定食目当てのお客様が次々と梅窓庵を訪れていらっしゃいました。

<梅窓庵>
丹波の美味しい卵と本枯節の朝定食 660円(税込)
10:00~11:00(L.O)

山頂目指して

お腹が満たされたので、腹ごなしに郷内のMAPを頼って寿長生の郷の山頂を目指すことに。

小路のシロツメクサやクローバーを見ながら「子どものころによくシロツメクサで花冠を作った!」「四葉のクローバーを探した!」なんて昔話に花を咲かせ歩いていくと、山から下りてきた鹿や猪が郷に入らないようにする為の、獣害除けの施錠付きゲートが見えてきました。
山頂を目指すには、このゲートの中に入らなければならないので、猪に出会ってしまったらと思うとちょっとドキドキです。

中に入ったらゲートをしっかり施錠して、いよいよ登頂です!

山頂まではおよそ30分ほどで登頂できるようなので、景色を楽しみながらゆっくり行くことにしました。緩やかな登り坂ではありますが、樹の根がはびこっていたりガタガタの道もあるので、足元を気にしながら登っているとなかなか体力を使います。
それでも、いたるところに自生する普段目にすることがない植物や、山の中を流れる澄んだ小川を見つけるたびにそんな疲れも忘れられます。

寿長生の郷には、約350種の樹木と、樹木のように大きくならず幹を持たない植物が320種認められているので、どの季節に訪れても様々な植物を愛でることができます。

日光の天然氷

次の目的を果たすため私たちが訪れたのは、総合案内所になっている古民家です。ここでは9月下旬までの期間限定で登場する、四代目徳次郎の天然氷のかき氷を味わうことが出来ます。

全国で天然氷を生産しているのはわずか5軒。そのうちの1軒「四代目徳次郎」の氷づくりは100年以上続く貴重な伝統文化です。

ご存じの通り、天然の氷を作る工程は過酷以外の何物でもありません。夜間の気温が十分に下がらないうちは、手作業で水をかき回し続け、中途半端に張ってしまった氷は何度も割り続け、雪が降れば徹夜で氷を守るために雪かきをする。
文面では伝えることが出来ないほどの手間と時間をかけて、ゆっくりゆっくり凍らせてできた透明の天然氷。このかき氷を食べるために、わざわざ天気予報を確認して選んだこの日は、よく晴れた絶好のかき氷日和です。

こちらでいただけるかき氷は、「みぞれ小豆」と「抹茶小豆」の定番の他に、「完熟あまおう」「城州白梅」の4種類。
私は迷いに迷って、郷で採れた梅と、杏子のシロップを合わせた、城州白梅のかき氷にしました。杏子のほろ甘さが梅の味を引き立ててくれる、暑い季節にはぴったりの清々しさを感じられるかき氷でした。

そして、訪れる前から完熟あまおうのかき氷一択と決めていたブルさんの感想。
「一人で食べきれないかも…なんて思っていたけれど、口の中でふわりと溶ける天然氷ならではのくちどけと、あまおうの大粒果肉が贅沢に入っていてとても美味しく、ほおばっても頭がキーンとしないやさしさでペロリと完食しました!別添えの練乳をかけると甘酸っぱい果肉と、やさしい甘さが重なりあって、ひと口ごとに幸せが広がります。」とのことでした。

目の前に竹林が広がるテラスで涼みながら味わう天然氷のかき氷は最高です。


<総合案内所(古民家)>
日光天然かき氷 氷室守 期間:2025年4月26日(土)~9月下旬
※期間変更になる場合あり

みぞれ小豆  :1,210円
抹茶小豆   :1,210円
城州白梅   :1,430円
完熟あまおう :1,540円

自然と人の共存する場所

郷内には「ヤギ放牧地」もあり、ヤギにエサを与えることもできます。
こういったところでは、強い動物の臭いが立ち込めていたりしますが、それを感じなかったのは、日々こまめにヤギの世話と放牧地の管理が徹底されているからだと思います。

季節折々の植物に山の生き物や動物、そして郷を守る人々に、訪れる人々。

まさに、自然と人の共存する場所でした。次は違う季節に訪れ、また新しい景色に出会いたいです。


【叶匠寿庵本社 寿長生の郷】
公式サイト:https://kanou.com/gnaviplus/sunainosato/
※<お食事処 山寿亭>の予約方法などは公式サイトを参照ください

住所:〒520-2266 滋賀県大津市大石龍門4-2-1
開苑時間:10:00~17:00
定休日:通常水曜日