まだガラケーが出る少し前の時代
ブラウン管から新喜劇が流れていた。
当時、ノストラダムスの予言「1999年7の月、空から恐怖の大王が降ってくる」は、だいたいの人が知っていた。
僕たちも、「もしそうなったらどうする?」とそんな会話を真剣にしていたけど寝たら忘れているくらいだった。
ツクツクボウシが「もう夏終わるよ〜、やりのこしたことないかぁ?」とせわしなく鳴きかけてくる。Tシャツに汗がべっとりまとわりつく。
今年も何もないまま終わっていくのかと焦燥感に駆られる。まだ8月31日まで何日かある。
今日はいつもの3人で上映会のアイデアを出していた。ステレオから流れる岬めぐりが胸にしみる。
アイデアが出ないとき、ギターを持ってみる。
「また集中力切れてもうたね」と僕はジャランと音を鳴らしながら言った。
「今日何杯目かのお茶飲もうか。」とリーダーのダンディー。
夕方になって
エディー「そういえば今晩、瀬田川の花火やなぁ。夏っぽいし行ってみーひんか?」
ダンディー「ミコちゃんも来てたらええなぁ、浴衣で」
一瞬間があって僕は無言でうなづくだけだった。
ダンディー「8ミリカメラ持ってっとかなな」
そんな夕暮れ時のワンシーンが思い出される
ドンッドドン!パラパラパラ
賑わう花火会場、唐橋近くで僕たちは、露店、花火を撮影しながら歩いていた。
そんな時、エディーが急に立ち止まってしまい、ダンディーがぶつかる。
視線の先にミコちゃんがいた。人混みの中、知らない誰かと手をつないでいるのがわかった。
僕からはエディーの顔は見えなかった。
そのことに、少しだけ救われた。
僕ら3人は、会場の隅の川縁に腰掛け 最後のフィナーレを待った。
エディーがぼそっと「ノストラダムス信じるしかないな」
「じゃあ最後の日はどうする?ゲーセン行ってストⅡでもしよか」と少し明るくダンディー。
「そんな日、ゲーセン開いてるかぁ?」と僕も乗っかった。
「そうやな〜、ほな、最後の日に告白するわ。」と決めたようにエディー。
ドンッと心臓まで響いた。
続いてドンドンッと鳴って、金色のカーテンみたいなので締めくくられた。
花火が終わっても、しばらく無言で真っ暗な川を見ていた。
結局、恐怖の大王は来なかった。
そんな遠い夏の日の事が何十年かぶりに思い出された。
今年も、瀬田川の花火は、あと数時間で開催される。