
biwacommon編集部のジョーだ。
【西明寺】は、滋賀県湖東地域に点在する天台宗寺院「湖東三山(西明寺・金剛輪寺・百済寺)」のひとつ。834年(承和元年)、三修上人(慈勝上人)が仁明天皇の勅願により開創した名刹。
西国薬師四十九霊場 第三十二番札所でもあり、本堂と三重塔はいずれも国宝。本堂は滋賀県唯一の国宝第一号として知られる。三重塔は国宝の建物に加え、内部の壁画や柱の絵も重要文化財に指定されており、鎌倉時代の壁画としては国内唯一の貴重な遺構だ。
西明寺は秋の紅葉の名所として知られるが、長い冬を越えて芽吹く春の青紅葉と苔の景観も新鮮で、見逃せない魅力がある。
今回は、魅力にあふれる西明寺を紹介しよう!
駐車場は3か所。今回は本堂へ続く参道途中の受付から入山した。最下部の山門からは約380m、この入口からは約80m。足腰に不安がある場合はこちらがおすすめだ。
入山料(拝観料):800円

庭園の入口をくぐると、手入れの行き届いた空間が広がる。四季折々の草木を楽しみながら回遊し、蓬莱庭へと進む。

滋賀県唯一、県指定天然記念物に指定されている桜「不断桜(フダンザクラ)」は彼岸桜系の冬桜で、9月中旬から翌年5月上旬まで断続的に花を咲かせる珍しい品種。春と秋には特に美しく咲き誇る。
親株は樹齢約280年。各所で桜を咲かせる姿は、やわらかな風情を添えている。
残念ながら、私が訪れた4月6日はすでに見頃を過ぎていたが、いくつかの桜を楽しむことができた。白く小さな花が可憐で愛らしい。

江戸時代に作庭された池泉鑑賞式庭園の蓬莱庭。
薬師如来・日光菩薩・十二神将を表現した石組や、雲を表すサツキの刈り込みなど、意匠に富んだ構成が見どころ。苔むした地面や池、石組が調和した、美しい庭園だ。
四季の移ろいを感じられる庭として国際的にも評価が高く、2015年にはアメリカのニュース専門チャンネルCNNが選ぶ「日本の最も美しい場所31選(Japan's 31 most beautiful places)」にも選出されている!
春の青紅葉、秋の紅葉、そして苔の深い緑。造園された庭でありながら、長い年月を経て自然に近い姿を感じさせる。その美しさの中には、どこか憂愁を帯びた趣がある。

西明寺は「近江の苔寺」とも呼ばれる。
境内一面に広がる苔は、長い年月をかけて育まれてきたもの。桜の花びらが舞う春には、緑との対比がいっそう際立つ。庭園は山に囲まれており、直射日光が当たりすぎない環境にある。苔の生育に適した、適度な日陰と湿度が保たれている。
木々が日差しを遮るため、境内はひんやりとした静寂に包まれる。歩くだけで気持ちが整うような空気感がある。

本堂と三重塔はいずれも国宝。
織田信長による比叡山焼き討ちの影響で、同じ天台宗の寺院も被害を受けたが、西明寺では本堂・三重塔・二天門が焼失を免れ、現存している。
長い歴史の中で守り継がれてきた建造物には、単なる偶然ではなく意志のようなものを感じる!

本堂は滋賀県唯一の国宝第一号。
鎌倉時代初期の建立で、飛騨の匠による純和様建築。釘を使わない工法が特徴だ。
内部には秘仏である薬師如来立像をはじめ、十二神将や二大天王などの重要文化財が安置されている。「干支(えと)寺」としても知られ、自身の干支の守護神に願いを託す参拝者も多い。
入口付近には「なで猫」や「びんずる尊者」も祀られている。思わず私も撫でてみた。多くの参拝者に撫でられてきたのだろう、特に頭や膝がつややかに光っていた!
また、通常非公開の後陣では、期間限定で織田信長の焼き討ちを免れた重要文化財の仏像群を特別拝観できる。例年、春と秋の年2回開催されており、2026年春は4月29日〜5月6日まで。
詳しくは西明寺の公式サイトで確認できる。

高さ23.7メートルを誇る三重塔は、鎌倉初期に建立されたもの。こちらも釘を使わない伝統建築だ。
初層内部には、巨勢派による壁画が堂内一面に描かれている。法華経の図解や、大日如来の脇侍仏である三十二菩薩、宝相華などが、純度の高い岩絵の具で極彩色に表現されている。
さらに三重塔は、建物自体が国宝であるだけでなく、内部の壁画や柱絵も重要文化財に指定されている。鎌倉時代の壁画として国内で唯一現存する、歴史的価値の高い文化財だ!
塔内部は現在非公開で、特別拝観も休止中となっているが、「シガリズム体験」に参加することで特別に拝観できる機会がある。
詳しくはシガリズム体験の詳細ページで確認できる。

室町時代初期に建立された二天門は重要文化財。本堂や三重塔とともに戦火を免れた建築だ。
近くには樹齢約1000年の夫婦杉がそびえる。2本の木が寄り添い一体化した姿からその名が付いた。さらに、後方から若木が伸びることから、子授けや安産、延命の霊木としても信仰を集めている。
私もそっと手を当ててみた。千年を生きる樹からは、目には見えない神聖な力を感じる!

西明寺では多彩な御朱印が授与されている。
枚数限定の切り絵特別御朱印や、なで猫像奉納記念の特別猫集印、十二神将朱印(全12種)など、種類も豊富だ。私は2026年の干支「午」にちなんだ、年限定の十二神将朱印を拝受した。
因陀羅大将(いんだらたいしょう)は薬師如来を守護する十二神将の一体で、午年や午の刻の守護神とされる。
青い和紙に描かれた端正な金の筆致は、力強い武神というよりも、冷静さの中に知性と余裕を感じさせる!

戦火を免れた国宝建築、長い歴史に支えられた庭園、そして四季折々の自然。どの季節に訪れても、その時ならではの美しさに出会える。
境内には「仏の使い」として親しまれる黒猫「空(くう)」と「玄(くろ)」も暮らしている。運が良ければ出会えるかもしれない。二匹の穏やかな佇まいも、この場所の魅力のひとつ。
歴史と自然が調和する西明寺。滋賀を代表する名刹として、一度は訪れておきたい場所だ!
天台宗 龍應山【西明寺】
〒522-0254 滋賀県犬上郡甲良町池寺26
TEL:0749-38-4008
拝観時間:8:30~17:00(入山は16:30まで)
※12月31日は15:00まで
公式サイト:https://saimyouji.com/