若狭での新たな挑戦
これまでは滋賀県長浜市でクラフトビールを造り続けてきた長濱浪漫ビールですが、新たな試みとして、県外での事業が始まります。それが、福井県若狭湾のすぐ目の前に位置するクラフトビール醸造所「若狭シーサイドブルワリー」の事業承継です。
若狭シーサイドブルワリーで造られてきた「若狭ビール」は、1997年に誕生した福井県初のクラフトビールブランドでした。しかし、コロナなどの影響もあり、運営会社の「千鳥苑」が2025年8月に破産手続きの開始決定を受け、一時はブランド消滅の危機に瀕していました。
ですが、破産管財人による試飲の結果、若狭ビールは残すべき事業であると判断されます。これを受けて、長濱浪漫ビールがその事業の引き継ぎに乗り出しました。
クラフトビールの文化を残していくために
ーーなぜ県を飛び越え、福井の「若狭ビール」の引き継ぎを?
今井さん:若狭ビールさんは、福井県第1号の地ビールとして地域で長年深く愛されてきた実績があります。隣り合う県、また同じように第1号として地域に根ざして活動してきたブランド同士。クラフトビール文化を発展させていくためにも、私たちが引き継ぐことに意味があると考え、今回の事業承継に至りました。
ーークラフトビールの文化を途絶えさせないためだったんですね。
今井さん:そうなんです。ただ、こうした共通する点があるとはいえ、全く違う環境でのスタートになります。長年稼働していなかった工場ですので、単純にそのまま引き継ぐだけでなく、ライセンスなどの法令関係の整備、設備の不具合を修復している段階です。造り手の安全とビールの品質を担保できる、より良い醸造環境を整えることが直近での一番の課題です。
長濱浪漫ビールだからこそできる事業継承
ーー長浜でこれまで実現できなかったことを、若狭で実現できることもあるんでしょうか?
今井さん:そうですね。これまで長濱浪漫ビールの設備やキャパシティ(規模)の制限で、どうしても実現できなかった製造手法や新しいアイデアを、若狭の地で試せるチャンスになると考えています。
ーー若狭でのビール造りで、ほかに試してみたいことはありますか?
今井さん:同じレシピでも、造る場所によって味わいが変わるので、そこはぜひ試してみたいですね。
例えば、看板商品の「長浜エール」のレシピをそのまま若狭に持って行って造ろうとしても、まったく同じ味にはならないんです。仕込みに使う原料や気候など、環境がこれだけ違いますから。それこそがお酒造りの面白いところで、同じレシピからどんな違う表情のビールが生まれるのか、今から試してみたいことが山ほどあります。
長浜と若狭から、新たなクラフトビールの可能性を
ーー「長濱浪漫ビールらしさ」も若狭ビールの中に取り入れていく予定なのでしょうか?
今井さん: 正直、具体的な味わいやブレンド設計についてはまだこれからの検討段階なのですが、長浜と若狭で同じブルワーが製造を担当することもあります。長濱と若狭のブランドを掛け合わせ、お互いのファンがワクワクするような取り組みができたら面白いなと思っています。
二つのブルワリーを行き来する中で、技術的な発見もたくさんあるはずです。お互いの良いところを吸収して高め合っていきたいと思います。
ーーこれからの展開が待ち遠しいです! 将来的には、若狭のブルワリーにも長浜のようなレストランを併設する計画などはあるのでしょうか?
今井さん:現時点では、具体的なレストラン建設や営業の計画はありません。まずは若狭ビールのクオリティを最優先にして、この場所でビール造りをしっかりと復活・安定させることに全力を注いでいます。
ですが、もちろんファンや観光客の皆様にこの若狭の醸造所へ直接お越しいただきたいという想いはあります。工場を見学していただいたり、イベントを開催したり。たくさんの人を呼び込める素晴らしい場所に、いずれは育てていきたいと思ってます。