【長濱浪漫ビール】創業30年、挑戦はまだ終わらない!クラフトビールからウイスキー、そして若狭へ〈ウイスキー・長浜蒸溜所編〉

【長濱浪漫ビール】創業30年、挑戦はまだ終わらない!クラフトビールからウイスキー、そして若狭へ〈ウイスキー・長浜蒸溜所編〉

2026.9.1長浜・湖北

20周年の大きな節目でスタートした『長濱蒸溜所』でのウイスキー造り

ーー併設されている『長濱蒸溜所』についてですが、ブルワリーがなぜまったく新しい“ウイスキー”というジャンルに挑戦し始めたのでしょうか?

今井さん:実は、ビールとウイスキーは「造り方」がよく似ているんです。麦芽を粉砕してお湯を加え、“麦汁”をつくるところまでは共通しています。すでにあるビール醸造の設備をそのまま活用できたからこそ、スムーズにウイスキー造りをスタートできたんです。

ーーそうだったんですね。「日本一小さな蒸溜所」と伺いましたが、実際に“小さい”って何がどのくらい小さいんでしょうか。

今井さん:ウイスキーを造っている蒸溜室は、8畳ほどのスペースしかありません。年間で作れる生産量も、大手の蒸溜所と比べると本当にごくわずかです。

ーー確かにコンパクト!ここで樽に詰められる前の原酒が作られるんですね。このタンクの形が瓢箪(ひょうたん)みたいで可愛いですね……まさか長浜城の初代城主の豊臣秀吉が縁起物としてシンボルに使用していた瓢箪に寄せているとか…?!

今井さん:いやそこは全く意識していないです(笑)。このポットスチルは、ポルトガル製の「アランビック型」という蒸溜器です。この個性的な形状だからこそ、他にはない原酒が生み出されています。

ーー1回の蒸溜でどのくらいの量の原酒ができるんでしょうか?

今井さん:約200Lで、ちょうど木樽1樽分にあたります。一度にできる原酒の量が少ないので、その分1蒸溜1樽ごとに工夫と情熱、魂を注ぎ込む『一醸一樽(いちじょういったる)』の想いを大切にしています。

世界で評価されるウイスキー

長濱蒸溜所が造るウイスキーは、国内外の品評会で数々の賞を受賞しています。なかでも2020年には、国際ウイスキー品評会「ワールド ウイスキー アワード」で、「AMAHAGAN World Malt Edition No.3 Mizunara Wood Finish」が「Best Japanese Blended Malt」のカテゴリーウィナーを受賞。蒸溜所の設立からわずか4年での快挙となりました。

ーー「AMAHAGAN(アマハガン)」や、「長濱」など、世界的に高く評価されている商品についてお聞きしたいです。

今井さん:私たちのフラッグシップである「AMAHAGAN」は、ブレンド技術を磨き上げるために生まれたブレンデッドモルトシリーズです。その経験を経て、自社の蒸溜所のウイスキーのみを使用したシングルモルトの商品が「長濱」になります。

世界に長浜の名を広く知ってもらうきっかけとなった、非常に思い入れの深いシリーズです。

ーーこうして並んでいると絵になりますね……!コラボ商品もとても多いですね!

今井さん:著名なアーティストさんや漫画などとのコラボレーションウイスキーも数多く手がけています。アーティストさんであれば、ご本人に試作品を試飲していただきながら、ブレンダーが一から造り上げています。これも、小さな蒸溜所だからこそできる挑戦の一つです。

土地ならではのストーリーをのせて

ーーウイスキーを、貯蔵する熟成庫として、廃校になった小学校やトンネル、さらに竹生島などを活用されているとか。どういった使い分けをされているんでしょうか?

今井さん:ウイスキーの個性に合わせて保管しています。 例えば、一定の温度と高い湿度の中で、ゆっくりと長期的に熟成させたい原酒は「トンネル」へ。四季の温度変化をダイレクトに与えて、熟成の歩みを早めたいものは「小学校」へ……といった具合に、商品や目指す味わいに合わせて保管場所を変えています。

ーー珍しい場所だなと思っていたのですが、こういう場所の方が温度や湿度の管理がしやすいんですか?

いや!……正直なところ、平地に広い倉庫を建てて、そこで一括で温度管理をする方がよっぽど使いやすくて管理もラクです(笑)。ですが、“滋賀の廃校で、琵琶湖の風や湿気をたっぷり浴びて育ったウイスキー”という、ストーリー性と共に楽しんでいただけたらと思っています。

滋賀県内でも、少子化にともなって廃校が増えてきているという現実があります。地域創生の観点からも、お酒造りを通して少しでも力になりたい、という想いもあります。

蒸溜所ならではの特別な思い出を

ーーここにある樽は実際にウイスキーが入ってるものですか?

今井さん: そうです!これは「ハンドフィル」という、自分でウイスキーをボトルに詰める体験用の樽です。樽の種類は時期によって異なるため、その時々でまったく違う味わいに出会えます。

ボトルのラベルには、シリアルナンバーや、ウイスキーを詰めた日付などを手書きで記載していただくことができます。

ーー一期一会の思い出を持ち帰れるんですね!これも蒸溜所だからできる体験ですね。

今井さん:私たちはファンの皆様に楽しんでいただけるよう、体験型コンテンツにとても力を入れています。蒸溜所の説明や設備を間近で見学して最後に試飲ができる「見学ツアー」をはじめ、1泊2日で原料の粉砕から蒸溜、さらには樽詰めまでを実際に行う「蒸溜体験ツアー」も開催しています。

ウイスキーが実際に造られている過程を見て、体験していただくことで、より深い愛着を持っていただけるきっかけになれば嬉しいです。

ーー体験型のコンテンツや、グッズなどは社内の専門チームが企画されているのですか?

今井さん:いえ、 製造スタッフも、レストランのスタッフも、ビールやウイスキーの担当といった垣根すら取り払って、全員でアイデアを出し合いながらイベントや企画を考えています。

オリジナルグッズについても、製造現場のブルワーやブレンダーからアイデアが出て、形になることも多いんです。部署を超えて、社内一丸となってものづくりを楽しんでいるイメージです。

▶︎〈若狭ビール編〉に続く……