「信楽」大人の遠足 Vol.1 舌に贅沢、心に休息——【土鍋ごはん&CAFE 睦庵】

「信楽」大人の遠足 Vol.1 舌に贅沢、心に休息——【土鍋ごはん&CAFE 睦庵】

2025.7.9信楽・甲賀

信楽、ちょうどいい田舎感と小洒落感

biwacommon編集部のひーちゃんです。
「なんかちょっと疲れたな……」そんなとき、ふと足を運びたくなる場所はありますか? 私にとってそれは「信楽」。

のどかな里山の風景に、センスのいい小さな店が点在し、地元食材を使った丁寧な料理に癒される。気づけば、可愛い器や雑貨にも出合え、気分よく“散財”できる楽しみも(!)。日帰りで訪れて、帰るころには心も身体もすっかり軽くなっている——そんな絶妙なバランス。

「いや、地元やし。」という方も、もちろんいらっしゃると思うのですが……
あらためて信楽を“目的地”として楽しんでいただけるよう、数軒のお店を巡る「大人の遠足」モデルコースを企画しました。第一弾として、信楽ランチにぴったりの特別な一軒をご紹介します。

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!こんな方にぴったりの記事です
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・旅先で丁寧な体験をしたい
・田舎の“静かな贅沢”を味わいたい
・自然や食、器、暮らしに関心がある
・忙しい毎日にちょっと疲れた

(関連記事)
信楽「大人の遠足」Vol.2 【古谷製陶所】日々の食卓に溶け込む信楽焼の器(うつわ)

古民家で味わう、極上のごはん時間

信楽高原鐵道信楽駅から車で10分ほど。自然豊かな神山(こうやま)の里山に佇む【土鍋ごはん&CAFE 睦庵】。2024年10月に信楽町長野からこの地へ移転した、「土鍋ごはん」が人気の食事処です。

店主の実家だった築150年の古民家の一部を、可能な限り元の姿を活かして丁寧にリノベーション。風情ある佇まいに現代的なセンスが融合した、さりげなく洗練された空間です。柱や梁には信楽町朝宮の木材が使われ、熟練の大工による手仕事が息づいています。

店内に一歩足を踏み入れると、木のぬくもりと、凛とした空気に包まれる——その瞬間、すでに“癒しの時間”が始まっています。

土鍋ごはんは、なんとセルフ炊飯!

テーブルには、土鍋とカセットコンロがセット済み。そう、ここでの主役は言わずもがな炊きたての土鍋ごはんです。楽しみだな〜と呑気にしていたら、なんと「自分たちで炊く」スタイルだと判明。え、聞いてないよ!それ大丈夫……?

運ばれてきたのは、信楽の田んぼで店主夫妻が育てたコシヒカリ。一人一合が用意されていました。説明書を読みながらお米と水をセットし、火にかける。タイマーを7分にセットすると、やがて白い湯気が立ちのぼります。まるで理科実験のようで、ドキドキ。非日常の体験に、つい気持ちがはしゃぎます。

選ぶ楽しみ——信楽焼の器にふれる体験

ごはんを炊いている間に、お茶碗と箸置きを選びます。
並んでいるのは、すべて地元・信楽焼のもの。風合いも色味もさまざまで、器好きにはたまらないラインナップです。

普段はシンプル派なので、ここでは思いきってカラフルで遊び心ある絵付けのものを手に取りました。お気に入りを選び、箸置きとの組み合わせを考えるその時間までもが、体験の一部。五感すべてで“食”を楽しむ仕掛けに、ワクワク感が止まりませんでした。

土鍋の蓋を開けた瞬間、幸福が立ち上る

炊飯を終えると、次は13分の蒸らし時間。火を止めてもブクブクと湯気を立て続ける土鍋に、さらに期待感が高まります。

そしてついに、蓋を開ける瞬間——

ふわりと立ちのぼる湯気とともに現れたのは、ツヤツヤと光る白いごはん。そのふくよかな香りだけで、お腹も心も満たされるような感覚に包まれます。一口頬張れば、ほどよい粘りと甘みが口いっぱいに広がり、思わず目を閉じて味わいたくなる。まさに“ごはんが主役”の美味しさです。

「土鍋炊き=難しい」という思い込みは、ここであっさり覆されました。特別な技術は不要。丁寧に向き合うだけで、簡単に絶品ごはんが炊き上がる。そんな気づきがありました。

一合なんて食べられない…はずが、完食

ランチセットの主菜は、「ごはんに合うこと」を基準にした家庭料理。この日はスタッフのタナカと二人で訪れ、「おろしハンバーグセット」と「焼き魚セット」をシェアしました。

まず登場したのは、小ぶりな丼ほどの器にたっぷり盛られたサラダ。店主の娘さんが育てたという紫たまねぎをはじめ、地元で採れた野菜がふんだんに使われ、パリッとした鮮度の良さに驚きます。

続いて陶板でアツアツに焼かれたふっくらジューシーなハンバーグ。1個がかなりのボリュームで、半分ずつ取り分けても十分すぎる満足感でした。そして驚いたのが、ホッケの一夜干し!身がふっくらと厚く、しっかり脂がのっていて、ついごはんが進みます。

「さすがに一合は無理かも」と思っていたのに、気づけばぺろりと完食。これこそ、体も心も欲していた“本物のごちそう”だったのかもしれません。

<この日のメニュー>
陶板焼きのおろしハンバーグセット 2,980円
焼き魚セット 3,080円
セットには土鍋ご飯+主菜+サラダ+選べるごはんのお供1品+汁物+香物付き

店主・田中睦美さんの想いにふれる

食後、店主の田中睦美さんにお話を伺いました。

----なぜ土鍋ごはんのお店を?

田中さん 曽祖父の代から信楽で窯元をしていました。この地は私にとって、生まれ育った大切な場所。
50歳を過ぎ、子育てもひと段落ついた頃、「信楽に恩返しがしたい」という思いが芽生えました。かつて父が土鍋を焼いていたことも縁となり、「土鍋で炊くごはんの魅力をもっと多くの人に伝えたい」と、長年勤めた教師を辞めてこの店を始めました。

----おうちでも土鍋ごはんを?

田中さん はい、土鍋ごはんを炊いて3人の子育てをしてきました。ごはんの炊ける空気、匂い、色、そんなささやかなものに心救われたことが何度もありました。毎日の暮らしや子育て、仕事の悩み……人それぞれにいろんなストーリーがあると思います。
辛いこともあるけれど、湯気を見ながら土鍋でごはんを炊くという行為が、ふと心をほぐしてくれることがあると感じています。


----確かに、ほっこりした気分になります

田中さん 
「今日じゃなくてもいいか。明日ゆっくり考えよう」と思えるような、そんな時間をこの場所で過ごしてほしい。
そしておうちでも、お休みの日だけでも、土鍋のごはんを囲んでゆったりとした気分を味わってほしい。
特別なことではなく、ほんの少しの手間が暮らしをぐっと豊かにしてくれます。「なんや、土鍋って簡単やん!」と気づいてもらえたら嬉しいです。

「また来たい」と思わせてくれる場所

帰り道、タナカがぽつりと漏らしたひと言。

「実は、朝から体調が悪くて食欲もなかったんですけど……不思議と、元気が出ました」

土鍋で炊いたごはんの湯気は、ただの“食事”を超えた力を持っているのかもしれません。
この日感じた温もりや、美味しさ、そして癒しの記憶。きっとまた訪れたくなる、そんな特別な一軒でした。

睦庵は、信楽焼の窯元巡りや陶芸体験、周辺のギャラリーや直売所とあわせて訪れるのにぴったりのロケーション。人気店なので、できれば予約がおすすめです。

【土鍋ごはん&CAFE 睦庵】
〒529-1812 滋賀県甲賀市信楽町神山401

営業時間
:平日 11:00〜15:30(L.O.14:30)、土日祝 10:30〜16:00(L.O.15:00)
定休日:金曜日、年末年始
予約方法:電話のみ(0748-82-3460)

公式サイト:mutsumian.jp
Instagram:@shigaraki.mutsumian