里山の風景に溶け込む、木造の旧校舎
滋賀県甲賀市。山あいの長閑な風景を抜けて坂道を上っていくと、大きな木々に守られるように佇む木造の建物が見えてきます。ここは、かつて地域の学舎(まなびや)だった小学校の旧校舎をリノベーションして生まれたギャラリー&カフェ【マンマ・ミーア!】。
昔ながらの平屋建ての校舎は、風合いのある瓦屋根や木枠の窓などにノスタルジックな雰囲気が漂っています。まるで里山の風景の一部として溶け込んでいるよう。
さっそく、「ガラガラ」と木の引き戸を開けて建物の中へ入ります。
木の温もりあふれる、食と手仕事の空間
使い込まれた床板がそのまま残された店内。食と手仕事が心地よく共存する、豊かな空間になっています。
pâtisserie MiA(パティスリー ミア):川端美愛さんが手掛ける、オーガニック素材にこだわった季節のケーキや焼き菓子を販売。
カフェ:窓の外の長閑な景色を眺めながら、ゆったり過ごせる客席スペース。要予約でランチも楽しめます。
木工作品:隣にアトリエを構える木工作家・川端健夫さんのカトラリーや器などの作品を展示販売。
ギャラリー:様々なつくり手の思いや作品に出会える展示スペース。
カフェでくつろぐだけでなく、センスよく飾られた店内を思い思いに見て回りながら、お土産用の焼き菓子や近隣の採れたて野菜、手仕事の道具を手にとってお買い物できるのが魅力です。
スマホを置いて、「ぼんやり」と過ごす贅沢
隣席と間隔を保って、テーブルがゆったりと配置されたカフェスペース。窓枠の向こうには、青く澄んだ空と山々の緑、そしてのんびりとした集落の暮らしの風景が広がっています。
ここにいる間だけはスマートフォンを置いて「ぼんやり」と。日常の慌ただしさや、次々と流れてくる画面の情報から離れて、脳と心がほぐれていくのを感じます。
ナチュラルな滋味が広がる季節のお菓子
今回いただいたのは、みずみずしい果物をあしらった「季節のフルーツ パリブレスト」。香ばしく焼き上げられたシュー生地に、今が旬のいちじくやシャインマスカットが彩り豊かにあしらわれています。
同行スタッフが選んだのは、季節のフルーツを添えたパンナコッタや定番のミニシューが盛られた「デザートプレート」。ドリンクは自家製の甘酸っぱいフルーツシロップをソーダ割りにした爽やかな一杯。
こちらのお菓子は、クリームもフルーツも、わざとらしい甘さが一切ありません。スッと舌に溶け込む食べやすさ、口の中に広がる素材そのものの自然な滋味。
美しく可愛らしいビジュアルも相まって、上質なものをいただいた時の高揚感がしっかりと味わえました。
ここから生まれる想い――「文化の発電所」でありたい
23年前にご夫婦で始められたというお店。パティスリーとカフェを担う美愛さんにお話を伺いました。
「二人で独立する際に、お店とアトリエと住居も兼ねて…と探していて出会ったのがこの木造校舎。教室を仕切る壁を外したり、漆喰を塗ったり。自分たちの手で少しずつ手を加え、今の形になりました。」
美愛さんのお菓子も健夫さんの木工作品も、偶然の出会いだったとは思えないほど、この場所にしっくりと馴染んでいます。
「ただ単に美味しいものを出したり飾ったりするだけでなく、ここから何かを感じてもらうための“種”になりたい。食や暮らしの文化を発信する“発電所”のような場所にできたらと思って始めました。」
調理する前の素材のこと、手を動かすこと、作品が一つの形になるまでのつくり手の思い。本当に大切なことをここに集う人々とともに真剣に考え、丁寧に伝えて続けていくこと。
『本当の美味しさ』は、土と人と素材のつながりから
ご夫婦ともに農業大学出身で、土や生産者への深い敬意を持ち続けています。10年ほど前にアメリカでオーガニックフードの思想に触れたことを機に、パティスリーで使う材料のほとんどを有機(オーガニック)素材へとシフトしました。
「大学の同期には有機農業をやっている仲間もたくさんいて。頑張っている姿を見ると、自分は農業はできないけれど、より良い形で使わせてもらって、伝えられたらいいなって。」
大切にしているのは、素材の良さを誤魔化さず、その魅力を引き出すこと。
「本物の純生クリームや厳選した素材でつくるお菓子は、普段市販の甘いものが苦手なお子さんでも驚くほど美味しそうに食べてくれます。『なぜ美味しいんだろう?』という疑問の先に、農家さんがいて、土や自然があって、そこには虫だっている。そんなことを伝えられるようなお菓子づくりをしていきたいです。」
銅鍋で仕上げる季節の自家製コンフィチュール
美愛さんの食への想いを詰め込んだお菓子たち。お土産としておすすめなのが、季節の果物やスパイスの風味をギュッと凝縮させた自家製コンフィチュールです。食品添加物を一切加えず、すべて店内の大きな銅鍋で丁寧に炊き上げています。
春夏はいちごやルバーブ、桃、いちじく、秋冬は栗やりんご、ゆず、キウイなど。色とりどりの可愛らしい瓶がずらりと並んでいて、どれを持ち帰ろうかワクワクします。
そして、いつかぜひ!と思っているのが月に1回登場するコース料理の「コンフィチュールランチ」(要予約)。近隣農家のオーガニック野菜&ハーブがふんだんに盛り込まれた料理は、どの一皿にも自家製コンフィチュールが使われているのだそう。お料理の隠し味やソースとして、どんな風に提供されるのか興味津々です。