第2章 滋賀県唯一の世界遺産【比叡山延暦寺】を巡る歴史ガイド!西塔の見どころ徹底解説

第2章 滋賀県唯一の世界遺産【比叡山延暦寺】を巡る歴史ガイド!西塔の見どころ徹底解説

2025.12.24大津・草津

西塔エリアは修行と静寂が色濃く残る聖域(所要時間:約60分)

比叡山延暦寺の西塔は、東塔の賑わいとは対照的に、修行の場としての色合いがより濃く残る。美しい杉並木に囲まれ、空気そのものが一段澄んでいるように感じられる。

本堂である釈迦堂(転法輪堂)を中心に、にない堂(常行堂・法華堂)、浄土院など、延暦寺の中でも特に古い歴史をもつ建造物が点在。

また、親鸞聖人が20年にわたる修行を行った地としても知られ、修行の緊張感が漂うエリアだ!

箕淵弁財天

西塔の駐車場から少し下った先に鎮座するのが、箕淵弁財天社。東塔の無動寺弁財天、横川の箸塚弁財天と並び、「比叡山三弁天」の一つに数えられている。

木立に囲まれた静かな佇まいで、水と芸能、財福の神として古くから信仰を集めてきた。西塔らしい、ひっそりと澄んだ空気が印象的な場所だ。悠久の時を刻んできた鳥居の姿もまた、この地の歴史を静かに物語っている!

箕淵弁財天の御朱印

西塔の御朱印はすべて釈迦堂で拝受でき、いずれも同じ書き手によるもの。払いと止めに明確なメリハリのある筆致は、ダイナミックでありながら整然とした美しい均衡を保っている。字間も丁寧に詰められ、文字組み全体のバランスは非常に端正。

水の神である弁財天らしく、水柱のような力強さと美しさを感じさせる御朱印だ!

親鸞聖人 修行の地

西塔は、親鸞聖人が9歳から29歳までの20年間、天台宗の僧として厳しい修行に身を投じた主要な修行の地。

比叡山で法華経の修行を重ねるなか、世俗化する仏教界や自身の煩悩に深く悩み、やがて山を下りて法然聖人と出会う。この西塔での修行経験が、後の浄土真宗成立における思想的基盤となった。

なお、「他力本願」とは、一般に使われる“他人任せ”という意味ではない。阿弥陀仏の本願力に生かされ、その力を信じて主体的に生き抜く姿勢を示す、きわめて能動的な教えだ!

弁慶のにない堂(常行堂・法華堂/重要文化財)

同じ造りの二つのお堂が、一本の渡り廊下で繋がる独特の建築。弁慶が渡り廊下を天秤棒にして両堂を肩に担いだという伝承から「弁慶のにない堂」と呼ばれるようになった。

正面左の常行堂には阿弥陀如来、右の法華堂には普賢菩薩が祀られ、それぞれ異なる修行が行われていた。比叡山の修行文化を体現する、非常に象徴的な堂宇だ!

釈迦堂(転法輪堂/重要文化財)

弁慶のにない堂から木立の石段を下っていくと現れるのが、西塔の本堂である釈迦堂。伝教大師最澄の自作と伝わる釈迦如来を本尊とすることから、この名で呼ばれている。

釈迦堂は、延暦寺で最も古い鎌倉時代の建造物。1595年、豊臣秀吉によって園城寺(三井寺)の金堂が移築されたもので、織田信長の焼き討ちを免れた貴重な存在だ。

戦国の世をくぐり抜けてきた堂宇だけに、重厚で緊張感のある空気をまとっている!

釈迦堂の御朱印

文字から文字へと流れる筆致は、やがて「大雄殿」という言葉へと収束していく。その筆の運びは、形を変えながら絶え間なく続き、万物は常に移ろい、決して同じ姿にとどまらないという「諸行無常」の教えを自然と感じさせてくれる!

「大雄殿」とは、本堂に本尊である釈迦如来が祀られていることを示す言葉。「大雄」とは仏教で「偉大な英雄」を意味し、悟りを開いた釈迦の徳を讃える尊称だ。

浄土院(重要文化財)

西塔の最奥に位置する浄土院は、延暦寺を開いた伝教大師最澄の御廟(ごびょう)であり、比叡山内でも最も清浄な聖域とされる場所。

現在も「十二年籠山」の行を修める僧が、生身の大師に仕えるがごとく、日々奉仕を続けている。

丁寧に手入れされた庭園には白砂の波紋が広がり、静寂がいっそう際立つ。青銅の宝珠塔から静かに滴る水音が、訪れる者の心を自然と鎮めてくれる!

※十二年籠山とは、12年間浄土院にこもり、人と会わず俗世と隔絶された環境で、伝教大師最澄の側に仕えるという、きわめて厳しい修行。

浄土院の御朱印

厳かで神聖、自然と心が引き締まる御朱印。阿弥陀如来の「阿」の字は丸く内へと収まり、庭園の白砂に広がる波紋を思わせる。

「来」の字は、ハネから上部へとつながる筆致が印象的で、過去から現在、そして未来へと続く時の連なりを想起させる。浄土院の清浄な聖域が、未来永劫続いていくことへの祈りが込められているように感じられる!

山王院堂

天台宗第六祖である智証大師円珍の住房跡で、後唐院とも呼ばれる。千手観音を祀ることから、千手堂・千手院の名でも知られる。

円珍没後、天台宗内部で円仁派との対立が起こり、円珍派はここから像を背負い園城寺(三井寺)へ移ったと伝えられている。武蔵坊弁慶が千日参籠を行ったという伝承も残る、歴史の厚みを感じさせる堂だ!

西塔の終わりに

東塔の賑わいから一歩離れた西塔は、人の気配は薄れ、比叡山が本来持つ「修行の山」としての顔を、静かに浮かび上がらせる場所だ。

親鸞聖人が長い年月を過ごし、伝教大師最澄の御廟が今も変わらぬ祈りに包まれるこの地に立つと、信仰とは観念ではなく、耐え、向き合い、積み重ねていく営みなのだと実感させられる。

西塔は、延暦寺の「修行」と「沈黙」を体感する場所。深く整えられた心を胸に、次はいよいよ横川へ。物語は、最終章へと進んでいく!

▶横川の記事はこちら
世界遺産【比叡山延暦寺】を巡る歴史ガイド!横川の見どころ徹底解説(後編)


天台宗 総本山 【比叡山延暦寺】
〒520-0116滋賀県大津市坂本本町4220
拝観時間:9時00分〜16時(エリアと季節により異なります)
諸堂巡拝券:1,000円(東塔・西塔・横川 共通)
公式サイト:https://www.hieizan.or.jp/