第1章 滋賀県唯一の世界遺産【比叡山延暦寺】を巡る歴史ガイド!東塔の見どころ徹底解説

第1章 滋賀県唯一の世界遺産【比叡山延暦寺】を巡る歴史ガイド!東塔の見どころ徹底解説

2025.12.24大津・草津

滋賀県唯一の世界遺産【比叡山延暦寺】とは

biwacommon編集部のジョーだ。今回は、滋賀県唯一の世界遺産【比叡山延暦寺】を訪ねてきた。比叡山は滋賀県と京都府の県境にそびえ、山頂からは東に琵琶湖、西に京都の街並みを一望できる霊山だ。

比叡山延暦寺は、788年に伝教大師最澄が開いた天台宗の総本山。「日本仏教の母山」「仏教の総合大学」とも称され、1994年にユネスコ世界文化遺産に登録された。

法然(浄土宗)、親鸞(浄土真宗)、栄西(臨済宗)、道元(曹洞宗)、日蓮(日蓮宗)など、日本仏教を代表する高僧たちを輩出してきた修行の聖地であり、パワースポットとしても注目を集めている!

延暦寺は、東塔エリア・西塔エリア・横川エリアの3エリアから構成され、山内全体が寺域。約1,700ヘクタール(甲子園球場約500個分)という広大な敷地に、約100の堂宇が点在する。
※延暦寺とは一棟の建物の名称ではなく、この一帯全体の総称。

今回は、実際に訪れた主要スポットを中心に、比叡山延暦寺の見どころを簡潔に紹介していこう!

参拝の目安時間
●3エリアを巡る場合(車移動 + 徒歩 + 参拝 + 食事・休憩):約4時間
●諸堂巡拝券:1,000円(東塔・西塔・横川 共通)

東塔エリアは比叡山延暦寺の中心(所要時間:約90分)

東塔は、伝教大師最澄が延暦寺を開いた発祥の地。総本堂である根本中堂を中心に、大講堂、阿弥陀堂、戒壇院など、延暦寺を象徴する重要な堂宇が集まる中枢エリアだ。

境内には宿坊「延暦寺会館」もあり、宿泊や精進料理、修行体験を通して、比叡山の精神文化にじっくりと触れることができる!

大講堂(重要文化財)

東塔に足を踏み入れて最初に現れるのが大講堂。824年に創建され、幾度となく焼失と復興を繰り返してきたが、現在の建物は1963年に山麓坂本の讃仏堂を移築したものだ。

堂内には本尊である大日如来を中心に、比叡山で修行した法然・親鸞をはじめとする各宗派の宗祖像がずらりと並ぶ。

一つの宗派にとどまらず、日本仏教全体の源流である比叡山らしい光景で、思わず足を止めて見入ってしまう!

大講堂の御朱印

力強く伸びやかな筆の流れが印象的な御朱印。僧侶たちが研鑽を重ねてきた学びの場である大講堂にふさわしく、堂内に祀られる各宗派の祖師像へ向けた誓いと約束、そして不断の精進が感じられる。

とりわけ大日如来の「大」の字は、大講堂の大屋根のように大きく広がり、比叡山延暦寺の過去・現在・未来を包み込むかのようだ。揺るぎない意志と重みを備えた一枚だ!

開運の鐘・世界平和の鐘

大講堂前庭に立つ鐘楼が「開運の鐘」、別名「世界平和の鐘」。一般参拝者が志納金100円で実際に撞くことができる。

実際に撞いてみると、その音の響きの大きさに驚かされる!山々に反響しながら広がっていく鐘の音は、まさに“比叡山に来た”ことを実感させてくれる瞬間だ。

小説家である吉川英治の『新平家物語』にも登場する、文学的にも印象深い鐘だ。

三面出世大黒天

伝教大師最澄が感得したとされる、日本の大黒天信仰発祥の地。大黒天・毘沙門天・弁財天の三尊が一体となった「三面六臂(さんめんろっぴ)」の尊像で、米俵の上に立つ姿が特徴だ。

豊臣秀吉が信仰し、出世を遂げたことから「出世大黒天」とも呼ばれ、福徳を授ける尊天として信仰されている。

三天合体という強力な密教尊で、「仕事運・出世運の神様」として知られ、ビジネスの成功を願う参拝者も多い。大黒堂で祈祷を受けると授与される「のぼり旗」は、1年間堂内に安置され、金運・商売繁盛・家内安全などの善願成就を祈願するもの。

堂内にずらりと並ぶのぼり旗の数が、その信仰の厚さを物語っている!

三面出世大黒天の御朱印

繊細さの中に堂々とした余裕を感じさせる、印象的な筆の流れの御朱印。大黒天の「大」と「天」の文字は大きく開かれ、上から下へと次第に広がる「末広がり」の形を成している。

これは、将来にわたって発展と繁栄が尽きることなく続くことを意味する吉相。善願成就や出世開運を祈るにふさわしい、縁起の良さに満ちた一枚だ!

総本堂 根本中堂(国宝)

延暦寺最大にして、信仰の中心となるのが総本堂である根本中堂。788年、伝教大師最澄が創建した一乗止観院を起源とし、度重なる災害を乗り越えながら、その都度規模を拡大し、現在の姿へと至った。

内陣には、1200年以上一度も消えることなく受け継がれてきた「不滅の法灯」が安置されている。毎朝夕、僧侶たちが菜種油を注ぎ足し、その灯を守り続けてきた営みは、比叡山の悠久の歴史そのものだ!この張り詰めた日々の積み重ねが、「油断大敵」という言葉の語源になったとも伝えられている。

現在、根本中堂は2016年から約10年間に及ぶ大改修の最中だが、参拝は可能。工事中の姿を間近に拝めるのは、文化財が未来へ受け継がれていく過程を体感できる、まさに今だけの貴重な機会といえる。

※クリアファイルの写真が「不滅の法灯」
※諸堂巡拝券の写真が改修前の「根本中堂」

総本堂 根本中堂の御朱印

●醫王殿(いおうでん/写真上)
根本中堂には、伝教大師最澄が自ら刻んだと伝わる薬師如来が本尊として祀られている。薬師如来は病を癒す「医王仏」とされることから、根本中堂は「醫王殿」とも呼ばれる。薬師如来の薬壺には、人々の願いに応じた救いが収められているという。

御朱印に記された「醫王殿」の細かな筆の流れは、小さな線が重なり合い、日々の努力や積み重ねが、やがて大きな成果へと昇華していく過程を思わせる一枚だ!

●荼枳尼天(だきにてん/写真下)
同じく根本中堂で拝受した、星峯稲荷堂の縁日限定御朱印。星峯稲荷堂に祀られる荼枳尼天は、白狐の姿で現れ、罪穢れを祓い、福徳・開運・商売繁盛・立身出世をもたらすとされる神様で、延暦寺創建の頃から信仰を集めてきた。

「星の峰」とは、比叡山延暦寺の修行の場である山頂を指す名。御朱印は、鋭く流れるような筆の払いが流れ星を思わせ、星をかたどった印と青地に金文字の配色は、比叡山の夜空に輝く一等星を彷彿とさせる。神秘性と美しさを併せ持つ一枚だ!

文珠楼(重要文化財)

根本中堂前の石段を上りきった先に建つのが文珠楼。延暦寺の山門にあたり、比叡山全体の総門としての役割を担う楼門だ。

比叡山の参詣道である本坂を徒歩で登ってくると、まずこの門をくぐることになる。知恵の仏である文殊菩薩が祀られ、学業成就のご利益で知られ、受験シーズンには多くの参拝者で賑わう!

戒壇院(重要文化財)

戒壇院は、天台宗の僧が正式な僧侶となるため、一生に一度だけ「大乗戒」を受ける授戒の道場。伝教大師最澄は「すべての人の中に仏性(仏の心)がある」と説き、生前に構想し、その死後に建立された、比叡山でも屈指の神聖な場所だ。

現在の建物は江戸時代の再建で、年に一度の「授戒会」の時のみ扉が開かれる。静まり返った境内に立つと、ここが単なる見学地ではなく、今も生きた修行の場であることを実感させられる!

阿弥陀堂

阿弥陀堂は1937年、延暦寺開創1150年を記念して建立された堂宇。檀信徒の先祖供養(回向)のための道場で、丈六の阿弥陀如来を本尊としている。

阿弥陀堂と法華総持院へと続く石段は、全部で52段。仏教では、人が悟りに至るまでに「五十二位(ごじゅうにい)」と呼ばれる修行の段階を踏むとされ、この階段はその教えになぞらえて「成仏への階段」と呼ばれている。

一段一段を踏みしめて登ることで、信仰の道を身体で追体験しているかのような感覚を覚える場所だ!

法華総持院東塔(重要文化財)

阿弥陀堂の隣に建つ法華総持院東塔は、伝教大師最澄が日本各地の霊地に建立した宝塔を総括する、中心的存在とされる堂宇。織田信長の焼き討ちによって一度は失われたが、約400年の時を経て再建された。

内部には金箔が張りめぐらされ、法華経と密教の世界観が凝縮されている。中央に宇宙の根本仏である大日如来を安置し、正面には胎蔵界、背面には金剛界を仏像で表した立体的な曼荼羅が展開。その両脇を法華経の教えを描いた壮麗な壁画が彩り、信仰と美術の双方から味わえる、圧倒的な空間だ!

延暦寺会館

延暦寺会館は、比叡山境内に佇む宿坊(寺院の宿泊施設)。琵琶湖を一望できる立地にあり、精進料理を味わいながら、静かでゆったりとした時間を過ごせる。

館内の喫茶「れいほう」では、生まれ年ごとの守護尊を表す梵字ラテが人気。伝教大師最澄が唐から持ち帰った茶の種が日本茶の始まりとされることを思うと、ここで味わう一杯にも深い歴史が重なる。延暦寺の12月の苔や落ち葉を思わせる色合いで、自然を飲むかのような趣がある!

ちなみに、抹茶梵字ラテは「鼠」、梵字ラテは「馬」だ。

東塔の終わりに

比叡山延暦寺は、東塔だけでも想像以上に広い!12月に訪れたこの日は雪が舞い、身を切るような冷え込みのなかで、かつての修行がいかに過酷なものであったかを実感させられた。

夏は酷暑、冬は厳寒。夜は深い闇に包まれる。その厳しい環境の中で積み重ねられてきた修行と祈りの歴史を、今こうして自らの足で辿れることは、実に贅沢な体験だと感じる。

東塔は、比叡山延暦寺の「始まり」と「精神」を体感する場所。ここで得た余韻を胸に、次は西塔へ。物語は続く!

▶西塔の記事はこちら
世界遺産【比叡山延暦寺】を巡る歴史ガイド!西塔の見どころ徹底解説(中編)


天台宗 総本山 【比叡山延暦寺】
〒520-0116滋賀県大津市坂本本町4220
拝観時間:9時00分〜16時(エリアと季節により異なります)
諸堂巡拝券:1,000円(東塔・西塔・横川 共通)
公式サイト:https://www.hieizan.or.jp/