
biwacommon編集部のジョーだ。
初詣や寺社参拝でおなじみの「おみくじ」。大吉や中吉など、その日の運勢を占うものとして親しまれているが、その発祥の地が滋賀県にあることをご存じだろうか。
現在広く普及しているおみくじのルーツは、比叡山延暦寺の高僧として知られる元三大師良源(がんざんだいしりょうげん)にあると伝えられている。
今回は、おみくじ発祥の地として知られる比叡山延暦寺・横川(よかわ)エリアにある【元三大師堂(四季講堂)】を紹介しよう。
なお、元三大師堂で行われるおみくじは、一般的な運試しのおみくじとは異なる。気軽に引くものではなく、人生の悩みや迷いに向き合うためのものだ。そのため本記事では、あくまで文化や歴史の紹介としてお届けする。
※この記事では実際のおみくじは体験していません。

滋賀県大津市にある比叡山延暦寺は、滋賀県で唯一の世界文化遺産であり、天台宗の総本山として知られる寺院だ。
境内は「東塔(とうどう)」「西塔(さいとう)」「横川(よかわ)」の三つのエリアに分かれている。そのうち横川エリアにある元三大師堂(四季講堂)は、国の重要文化財に指定されている。
この堂は、天台宗中興の祖とされる元三大師の住居跡に建てられたもの。後に四季ごとに法華経の論議が行われるようになったことから、「四季講堂」とも呼ばれるようになった。現在は元三大師を本尊として祀っている。

おみくじのルーツは、元三大師が作ったとされる「元三大師百籤(ひゃくせん)」にあると伝えられている。そのため、元三大師ゆかりの元三大師堂は「おみくじ発祥の地」として知られている。
現代のおみくじは自ら引いて結果を読むのが一般的だ。しかし、元三大師堂で行われるおみくじは少し異なる。
まず僧侶に悩みや迷いを相談し、読経の後に僧侶がおみくじを引く。そして、その内容について教えを授けてもらうという流れだ。読経や対話を経て行われるため、一つのおみくじに時間を要することもある。古くから受け継がれてきた伝統的な形式だ。
また、神社とお寺のおみくじにも違いがある。明治時代の神仏分離令以降、神社では和歌(神様の思いや導きを表した歌)を用いたおみくじが広まり、お寺では漢詩(仏の教え)をもとに、人生の指針となる教えが書かれた形式が受け継がれてきた。

元三大師は、平安時代中頃に活躍した天台宗の高僧であり、「おみくじの祖」として知られている。
12歳で比叡山に入り、その後、第18代天台座主に就任。当時、衰退していた延暦寺を立て直し、堂塔の復興や天台教学の振興に大きな役割を果たした。その卓越した指導力と法力によって多くの人々から尊崇され、比叡山に再び活気をもたらしたという。
現在でも元三大師は全国約300か所の天台宗寺院で祀られており、比叡山延暦寺の横川はその信仰の中心地となっている。
また、元三大師には数多くの伝説が残されている。その中でも特に有名なのが「角大師(つのだいし)」の伝説だ。

元三大師堂を訪れた際にぜひ注目したいのが、「角大師(つのだいし)」だ。
角大師とは、平安時代に疫病が流行した際、元三大師が疫病神を退散させるため鬼神のような姿となったという伝承に由来する。
伝説によると、元三大師は大きな鏡に自らの姿を映し、静かに禅定に入った。すると頭に二本の角を生やし、骨と皮ばかりに痩せた異形の姿へと変わり、疫病神を追い払ったという。その姿を写し取ったものが「角大師護符」だ。
弟子たちがこの護符を各家庭に配ったところ、お札を貼った家では疫病の被害がなかったと伝えられている。このことから、角大師護符は古くから魔除けや疫病除けとして信仰を集め、現在も全国の天台宗寺院で授与されている。
元三大師堂でも購入可能。寺院などで見かける独特な鬼の絵は、この角大師の伝承に由来するものが多い。

左上に押された「角大師」の印が印象的で、疫病除けの御利益を感じさせる一枚。均一な線でありながら、独特の歪みやかすれがあり、どこか不気味でありつつも愛嬌のある角大師の姿が想起される。他ではなかなか見られない個性的な御朱印だ。

おみくじを引いたことがある人は多いだろう。しかし、そのルーツが滋賀県の比叡山延暦寺にあることを知る人は意外と少ない。
元三大師堂には、おみくじ発祥の地としての歴史だけでなく、元三大師の信仰や角大師の伝承など、比叡山の文化が今も受け継がれている。
比叡山を訪れる機会があれば、横川エリアにある元三大師堂にもぜひ足を運んでみてほしい。日本のおみくじ文化の原点に触れるとともに、千年以上受け継がれてきた信仰の歴史を感じられるはずだ。
▶比叡山・横川(よかわ)エリアの記事はこちら
第3章 滋賀県唯一の世界遺産【比叡山延暦寺】を巡る歴史ガイド!横川の見どころ徹底解説
天台宗 総本山 比叡山延暦寺・横川 元三大師堂(四季講堂)
〒520-0116滋賀県大津市坂本本町4225
拝観時間:9時00分〜16時(エリアと季節により異なります)
諸堂巡拝券:1,000円(東塔・西塔・横川 共通)
公式サイト:https://www.hieizan.or.jp/