
biwacommon編集部のジョーだ。今回は、近江八幡の【長命寺】の参拝レポートをお届けしよう!
長命寺は、聖徳太子の開基と伝わる近江西国三十三所第31番札所。琵琶湖畔にそびえる長命寺山(標高333m)の中腹、約250mの高台に位置している。
麓から本堂へと続く808段の石段が名物で、健康長寿を願って参拝する人々が多く訪れる。登り切った先には、達成感とともに琵琶湖を一望できる絶景が広がる!
近年は、体力づくりを兼ねてあえて麓から登る人も増えているという。私は少し気後れして、車で残り約100段分の駐車場まで上り、そこから参拝をスタート!ただし山道は狭いので、運転には十分注意を。

808段を登り切ると、古の風格を感じる山門が出迎えてくれる。長命寺は「寿命長遠(じゅみょうちょうえん)」の御利益があることで知られ、山門をくぐればさらに本堂へと続く階段が現れる!
ちなみに寺名の由来は、景行天皇の時代に武内宿禰が柳の巨木に「長寿」の文字を刻み、300年の長寿を得たという伝説に由来している。後に聖徳太子がその霊跡を見つけ、観音像を刻んで伽藍を建立したのが長命寺の始まりと伝えられている。
拝観料:無料

境内でまず目を引くのは、慶長2年(1597年)建立の三重塔。高さ24.4mのこけら葺き屋根で、胎蔵界大日如来を安置している。
案内板によると、「塔全体で余裕のある形態を持ち、比較的遺構の少ない桃山時代の塔として貴重」とのこと。平面の逓減率が小さく、軒の出が浅いことは、豪壮さや権威を表現する様式と、自然光を取り入れる機能性を併せ持つ桃山期の特徴だという。
全体はやや色あせた朱色だが、柱の端は黄色く塗られている。かつては、優美で鮮やかな色彩を誇る塔だったに違いない!

本堂は室町時代の大永4年(1524年)の建立で、典型的な密教寺院の形式を今に伝えてくれる。内陣には本尊・千手十一面聖観世音菩薩(秘仏)を安置し、左右には毘沙門天立像(重要文化財)と不動明王立像を祀る。
本尊は「千手観音」「十一面観音」「聖観音」の三体で「千手十一面聖観世音菩薩三尊一体」とされている。歴史的にも極めて貴重な存在だ!

本堂の左手、西側にあるのが三仏堂。再建年は不明だが、永禄年間(1558〜1570)頃とされ、佐々木定綱が父の菩提を弔うため建立したと伝えられている。釈迦三尊を祀る堂だ。
隣接する護法権現社拝殿も永禄8年(1565年)頃の建立とされ、渡り廊下とともに国の重要文化財に指定されている。

境内西側の高台にある鐘楼からは、三重塔・本堂・三仏堂・護法権現社拝殿を一望できる!
重要文化財が一堂に並ぶ景観は圧巻で、自然の中に堂々と佇む姿はまさに“文化財の宝庫”だ。鐘楼自体も重要文化財であり、「重要文化財を見渡す重要文化財」という贅沢な体験だ。

鐘楼は慶長13年(1608年)に再建され、内部の梵鐘は鎌倉時代のもの(県指定有形文化財)。
訪問時は『国際芸術祭BIWAKOビエンナーレ2025 “流転〜FLUX”』の展示会場のひとつになっており、宇野裕美氏のインスタレーション作品『散華』が展示されていた。
花びらを散らす体験型作品で、鐘を見上げる・見下ろすという視点の変化が空間に奥行きを生み出していた。伝統と現代アートが静かに融合する、不思議な調和を感じる!

同芸術祭では、宇野裕美氏、石川雷太氏、陳見非(チェン・ジエンフェイ)氏の3名のアーティストが作品を長命寺で公開している。一部をご紹介しよう。
写真上の宇野氏の『手がとどきそうな空』は、 柔らかなストレッチ素材で青空を地上に引き寄せたような表現だ。「柔」を象徴するこの作品と、「堅」を思わせる古の建造物との対比が、美しくも印象的な作品だ。
写真下の石川氏の作品は、琵琶湖を望む高台に設置されたガラスと鉄、言葉を組み合わせた作品で、風景そのものを素材にするかのように佇む。言葉とともに湖の光や風を感じられる作品だ。

長命寺では複数の御朱印が授与されている。私は基本形の「大悲殿」を拝受した。流れるような筆致の中で、「悲」の文字が両腕で包み込むような形をなし、「長命寺」の「長」がハート型にも見える。“ハート=命=長生き”という私なりの解釈だが、愛を持って長生きしたくなる、そんな温かみのある御朱印だ。
※「大悲殿」とは、観音様を祀るお堂の意味。

長命寺は、重要文化財の宝庫でありながら、琵琶湖を望む絶景寺院でもある。808段の石段を登り切った先に広がる景色はまさに息をのむ美しさ!
紅葉の見頃(例年11月中旬〜下旬)には、境内全体が鮮やかな朱に染まり、多くの参拝客で賑わう。体力と心を整えながら、ぜひ一度その景観と歴史を体感してみてほしい。
【長命寺】
〒523-0808 滋賀県近江八幡市長命寺町157
TEL:0748-33-0031
拝観時間:8:00〜17:00