
こんにちは。biwacommon編集部のキム兄です。
アウトドア好きで生きもの好き、そんな自然大好きな僕が、今回ぜひ皆さんにご紹介したいのが、大津市・湖西にある【びわこベース】という小さな水族館です。
ここでは、琵琶湖をはじめ日本各地の淡水生物が常時100種以上展示されていて、天然記念物などの希少な生きものにも出会うことができます。オープン3周年を迎えたばかりで、開館日は金・土・日・祝のみにもかかわらず、これまでの来館者が1万6千人を超える隠れた人気スポットです。
取材に訪れたのは8月初旬。うだるような暑さのなか車を走らせ現地に向かうと、雄大に広がる琵琶湖を望む絶景をバックに、水族館とは思えないこぢんまりとした白い外壁の建物が見えてきました。元は喫茶店だったということで、よくみると確かに「小さな水族館 びわこベース」と書かれているのですが、油断していたら通り過ぎてしまうほど水族館アピールが薄めなので、行かれる方は注意が必要です(笑)。

扉を開けて中に入ると、外の暑さとは別世界の涼しげな光景が目に飛び込んできます。小さな水槽が、まるで氷のブロックを積み上げたように、壁に沿って綺麗に並べられていて、それを目にした瞬間、体温がスーッと下がっていく感覚があり、外の暑さを一瞬で忘れさせてくれました。
そして同時に、僕の中の童心がムクムクと目を覚まして、仕事で取材に来ていることも思わず忘れそうになってしまったのですが、ここはなんとか堪えて、笑顔で迎えてくださった【びわこベース】代表の関さんにいろいろお話を伺うことができました。

【びわこベース】については、代表である関慎太郎さんを抜きにして語ることはできません。関さんは現在、淡水にすむ水辺生物を中心に、野生の姿を撮り続ける自然写真家として活動されていて、これまでに約70冊もの生きものに関する本を出版されているそうです。
神戸で生まれ、幼少期から水辺の生きものが大好きだった関さんは、大人になって滋賀に拠点を移し、飼育員として琵琶湖博物館や京都水族館の立ち上げにも携わってこられました。
「ほんまに子供のころから川の魚が好きで、よく捕りに行ってましたね。その少年が淡水魚のメッカ琵琶湖に憧れて、大人になって琵琶湖にきて、たまたま空きがあったやりたかった飼育員の仕事に就いたっていう感じです。飼育員をしながら、展示する生きものは自分で捕まえてたんで、子供の頃からやってることは変わってないですね(笑)」
そう話す関さんの笑顔も、きっと川でずぶ濡れになりながら魚捕りに夢中になっていた関少年の時から、何も変わっていないのだろうなと思いました。

飼育員として川で魚を追いかける日々を送っていた関さんが、写真を撮ろうと思ったのは、当時図鑑の撮影用に生きものを採取する手伝いをしていた頃。カメラマンの方から「採ってばかりじゃなくて、撮ってみたら?」と生きものを採集する"採る"だけではなく、画像として記録する"撮る"ことを勧められたことがきっかけだったそうです。
それから、そのカメラマンの方に水槽撮影の技術を学んだ後、関さんの撮影場所は、栗東市の自然写真家飯村さんと出会うことで、生きものが棲むフィールドへと広がっていきます。
飯村さんは、ヤマセミの撮影など自然との向き合い方がすごく上手い方で、関さんは飯村さんと一緒にフィールドを回ることで、フィールドの歩き方や、生きものとの接し方を学んだといいます。そのおかげで、生きものだけでなく、周りの風景も一緒に映り込んだ希少な写真が撮れるようになり、それが今でも関さんの写真家としての強みになっているそうです。
「正直それまでカメラ自体にはそれほど興味はなかったんです。まぁ、今もそうですが(笑)。とにかく、自然に棲む生きもののありのままの姿を記録したい、その想いだけでこれまで何とかやってこられたっていう感じですね。」
まさに"好きこそものの上手なれ"。関さんの生きものに対する愛が、これまで興味のなかったカメラの技術を上達させていったということなのでしょう。
ほぼデビュー作という、川の中を優雅に泳ぐオオサンショウウオの姿を収めたワンカットを見せていただいたのですが、これがデビュー作とは思えないすごい迫力で、思わず「こんなんどうやって撮るんですか?」と尋ねると、
「潜って撮ります。水中に潜って生きものを捕まえるのは得意でしたから、網をカメラに変えただけです(笑)」
いやいや、そんな簡単なものではないでしょうけど、これも関さんの生きもの愛が成せる技なのでしょう。

関さんは、飼育員として写真家として日々生きものと向き合うなかで、生息地を奪われ少なくなっていく身近な生きものたちを守る必要性を強く感じていました。そんなとき、コロナ禍になり各地の水族館の集客が厳しくなってくると、身近な生きものたちの展示や繁殖に注力できなくなる施設が増えました。飼育員として身近な生きものを守っていくことに限界を感じた関さんは、「それなら自分でやろう」と決意し、飼育員を辞め、身近な生きものたちを守る取り組みの拠点として、この【びわこベース】を立ち上げたのです。
【びわこベース】が担う重要な取り組みに“生息域外保全”というものがあります。あまり馴染みのない言葉だと思いますが、絶滅危惧種などの希少な生きものを保護して、それらを増やすことにより絶滅を回避する方法のことで、【びわこベース】では、工場建設などによって棲む場所を追われた希少な生きものたちを預かり、ビオトープなどの新たな生息地が整ったのちに、再び元の生息域に戻す取り組みをされています。
「ここで水族館がやりたかったというより、こういうことをずっとやりたいと思ってて、たまたま生息域外保全のお話をいただいて、それをきっかけにここを始めたっていう感じです」
この場所にした理由を尋ねると、
「家の近くで探していたらたまたま空いてたので(笑)」
関さんの話にはよく「たまたま」という表現が出てきます。笑いながらライトに運良く的な感じで話されるのですが、いやいや、やはりこのたまたまも関さんの信念と情熱が呼び寄せていることは間違いありません。

びわこベースでは水槽展示の他に、月1回のペースで、いろんな生きものをテーマに各分野の専門家がトークライブを行う『サイエンスカフェ』というイベントを開催されています。
(サイエンスカフェは予約制です。参加方法等の詳細はHPで確認してください)
また、いろんな地域に出かけて行って地元の子供たちと一緒に川に入り、みんなで捕まえた生きものを、軽トラに積んだ水槽に入れて、即席のミニ水族館をつくる“みんなで水族館”という野外のイベントも開催されています。
どちらのイベントも、参加者に生きものについて考える場を提供することで、生きもの好きの人たちの輪が広がり、生きものを守ろうという思いが広まることを願って開催されています。
びわこベースの活動はすべて生きものを守るという尊い思いに則って行われているのです。

びわこベースは、小さな水族館というキャッチコピーのとおり、展示スペースがとてもコンパクト。キャパ的にも今がギリギリだそうで、今後は拡張もしくは広いところへの引っ越しも考えているとのことですが、小さいことのメリットもあるそうで、
「常にスタッフが目の届くところにいるので、いつでも気軽に質問することができるんです。これは大規模水族館にはないウチの良さですね」と関さん。
今回は取材ということで代表の関さんが案内しながらいろんな生きものについての解説もしてくれましたが、関さんがいないときでもアルバイトやボランティアの方がアットホームな雰囲気で応対してくださるので安心です。
また、実際にヘビやカエルを水槽から出して触らせてくれたり、タイミングによっては餌やりや繁殖させているところを見ることができたりと、生きものとの距離がグッと縮まる、様々な貴重な体験をすることができます。

関さんの周りでは、生きもの好きの輪が広がり、多くの方が生きものを守る取り組みに賛同し、関わっておられます。
「本当に多くの方々に助けていただいてここは成り立っているんです」
そういって館内にある本棚や、手書きのイラストなど、地元の方や学生さんが手作りしてくれたことをとても嬉しそうに説明してくれました。
展示の生きものはもちろんですが、他にも、生きもの関連の書籍、手作りのテーブルにびっしりと書かれた来館者の方々のメッセージやイラスト、寄付でいただいたという創作物の数々など見どころ満載です。
生きものグッズの販売コーナーも充実していて、ここでしか買うことのできないオリジナルグッズがいっぱいあるので要チェック。特に関さんが思い入れが強いというサンショウウオのグッズは圧巻の品揃えです。

取材の最後に、関さんに将来の展望を尋ねると、
「生きものを守っていくためには、守っていく“人”を増やして、育てていくことが大事なんです。ここはその拠点の一つとして始めたんですけど、将来的には、京都ベースとか○○ベースみたいな感じで、各地域に広げていけたらいいなと思いますね。一つだけだと、そこが例えば火災なんかでダメになった場合、終わっちゃうじゃないですか。そんなリスクを回避するためにも、拠点を増やす必要があるんですよね」
どこまでいっても関さんの信念は“生きものを守り続けること”で一貫しています。
生きもの大好きな僕としては、今回取材を通して、関さんの思いやびわこベースの取り組みを知ることができて、すごくよかったと思ったんですが、実は今回は取材ということもあり、展示の生きものをあまりじっくりと鑑賞できなかったのが、心残りでもありました。
取材後、関さんと、途中から手伝いにこられた奥様に笑顔で見送られながら、次はプライベートで訪れて思う存分楽しみたいと、後ろ髪を引かれる思いでびわこベースを後にしました。
ぜひみなさんにも、この関さんの思いの詰まった小さな水族館を訪れていただきたいです。通常は金・土・日・祝のみの開館ですが、夏休み期間は特別に毎日開館中です。自由研究のネタにも最適だと思いますよ!
小さな水族館【びわこベース】
〒520-0514 滋賀県大津市木戸1383-1
https://www.biwako-base.com/
〈開館日〉
毎週金・土・日・祝日(夏休み期間は特別に毎日開館中)
※代表がいる日やイベント開催の日程等はHPで確認できます。
〈開館時間〉
10:00〜17:00
〈入場料〉
大人(高校生以上) 500円
子供(3歳以上~中学生)100円
駐車場:3台