今回ご紹介するのは高島市のソラノネ食堂さん。細い山道を抜けた先にある、見晴らしのいいレストランです。何年も前から行ってみたいな〜と想いを寄せていた場所に、ようやく訪れることができました。ここでどうしてもやりたかったことが、「かまど体験」。薪と火をくべて、フーフーと竹筒で空気を送りながらご飯を炊き上げていくアレです。
物心着いた頃の、はるか昔の記憶。親戚や近所のおうちの台所土間にはまだ「おくどさん」と呼ばれるかまどが存在していました。何かの寄り合いがあると、割烹着を着た大人たちが大きな鍋で煮炊き物をして、おくどさんの周りを慌ただしく行ったり来たり。辺りには白い湯気が立ち込め、そのうち家中に美味しい香りが漂ってくるのでした。子どもは邪魔になるから、と遠くから眺めているだけだった場所。大人になったらあの湯気の渦中に自分も行けるのか、とワクワクした景色です。今回何十年の時を経て、ようやくあの憧れのかまどで調理をすることができました。
ソラノネ食堂さんは山の上にあるので、毎年雪が深くなる冬の間はお休みされます。昨シーズン終了間際の晩秋に訪れたため、記事の写真が季節はずれなのはご了承ください!2024年の新シーズンは3/16からオープンされています。
ちょっと竹筒でふーふーするぐらいかな?と思っていたら大間違い。かまど体験は薪を割るところからスタートします。斧でコンコンと地面に叩きつけて薪を割る、の繰り返し。キャンプなどで慣れている方も多いと思いますが、中腰での作業、これ結構堪えますね。先人たちは毎日こうやってご飯を炊いたりお風呂を沸かしていたと思うと、現代の家事のなんと便利なことよ(それでも面倒くさいと思ってしまうのだけど)。
「愛農かまど」という手づくりのかまどに、割った薪を組んで火をくべます。思ったよりもスムーズに、シュルシュルっと火が回ります。でもお米を炊くほどの火力にはならないので、竹筒ふーふーの出番です。これも、想像よりも重労働。口いっぱいに息を溜めて吹き込むのですが、普段の運動不足が顕著に現れすぐに息切れを起こしてゼーハーしてしまいます。そして、やりすぎ注意なのも難しいところ。どのぐらいの火加減がベストなのか?かまど素人には全くわかりませんが、毎日のようにここでご飯を炊いておられるスタッフさんが頃合いを丁寧に教えてくれるので安心して作業することができます。
そうこうするうちに羽釜から細い湯気が立ち、シューとかすかな音が上がりはじめます。湯気はどんどん大きくなり、やがてご飯の炊けるいい匂いとともに音はグツグツからチリチリへ。そこでサッと釜を火から下ろします。炊飯器と違って、その日の水温などによって炊けるまでの時間はまちまち。だから小さな変化を見逃さずに、注意深く耳をそばだてて観察することが大事なんだそう。自然の中で鳥のさえずりを聞きながら、うまく炊けることだけを祈って集中する贅沢な時間。もちろんそんな繊細な炊飯をしたことがないので、美味しさへの期待もどんどん膨らんでいきます。
うまく炊けているかな?とドキドキしながら羽釜の蓋をオープン。炊き立ての良い香りとともに対面したツヤツヤのご飯、とっても美味しそうでホッと安堵しました。すでにお腹はペコペコ。逸る気持ちを抑えながら、丁寧にご飯をおひつに移していきます。いつもより何倍も手間をかけて炊いたからか、ご飯の一粒一粒に感謝のようなジワっとした気持ちが湧き上がってきます。
この後はいよいよ、食堂スペースへ移動してランチタイム。何はともあれ、最初の一口はご飯だけをじっくりと味わいます。厳選された地元のお米と毎朝汲んでいるという湧水の美味しさもあるのでしょうが、かまどで炊いたご飯ならではのほんのり香ばしい風味。噛みしめるたびに甘くふっくらとした幸福感で脳が満たされるような感覚。炊飯器で炊いたご飯とはまた違う格別の味わいでした。
ご飯は1人約1.5合もあるので、卵かけご飯にしたりカレーをかけたりと、お好みでアレンジしながらお腹いっぱい楽しめます(※別料金の場合あり)。
かまど体験のランチメニューは、ソラノネ食堂のおかず(お惣菜3種、お漬物、サラダ、汁物、卵料理)または野菜カレー(カレールー、サラダ、オムレツ)のどちらかを選ぶことができます。この日はおかずセットをセレクト。高島市近郊で採れたお野菜をふんだんに使ったおかずは、どれも素材本来の味が引き立つ絶妙な美味さでした。優しいけれど決して薄味というわけではなく、一品一品が凝った味付けで十分に食べごたえがありました。
写真のメニュー(一例)
・かまどご飯(1.5合)
・豚肉の野菜巻き(しょうゆ麹ソース)
・原木しいたけの紅白なます
・菊芋の甘辛風味揚げ
・自家製のお漬物
・ふろふき大根
・納豆麹
・ふくさ焼き
・生卵(+料金で追加)
春には春の、夏には夏の季節野菜が登場します。卵も近隣の鶏卵場で採れた新鮮なものだけが使われているそう。どのメニューも、じんわり、ほっこり身体に染み渡るような味わい。もちろんカレーにもたっぷり地野菜が使われています。
11月末の晩秋でしたが、まだ少し陽が残っていたのでランチは外のテラスでいただくことに。シンボルツリーの銀杏が最も美しく色づいた様子を眺めながら、気持ちのいいひとときを過ごすことができました。隣の席の方はワンちゃんと一緒に楽しまれていましたよ。
また、かまど体験をする時間がなくても、レストランメニューでスタッフさんが炊いたかまどご飯を味わうことができます。ドリンクやスイーツだけのカフェ利用もOK。販売コーナーでは大人気の「ブルーベリーフィールズ紀伊國屋」のジャムやクッキーのほか、採れたて野菜も販売されていました。ぜひ思い思いの過ごし方で楽しんでください。
【かまどご飯体験】
コンセプトは「食×エネルギー×コミュニケーション」。高島のお米や湧水を用い、朽木村の薪を燃料にして、かまどでご飯を炊く体験ができる。自然の恵みに感謝しながら食べたり、みんなで火を囲んで語らったり、世代を問わずかまどを通して何か気づきがありそう。
(1部)10:30~ (2部)12:00~ ※前日までに要予約
大人:2,220円(税込) 子ども(小学生以下):1,650円(税込)
<予約・問合せ>
TEL 0740-32-3750
mail infosoranone@gmail.com