
biwacommon編集部のモリモトです!
突然ですが「真珠」と聞くと何を思い浮かべますか?
私は海で養殖されていて、丸っこい宝石で、なんとなくフォーマルな場で身につけるもの、、というイメージでした。
そんな時に知った『びわ湖真珠』。
淡水で真珠ができるの?!と驚く方も多いのではないでしょうか。
びわ湖真珠の実態を探るべく、滋賀大津にあるびわ湖真珠のお店【神保真珠商店】さんにやってきました。
取材を終えた頃にはびわ湖真珠の魅力、【神保真珠商店】さんの商品の虜になっているのでした、、、。
出迎えてくださったのは三代目の杉山知子さんです。
お父様の代までは実店舗を持たずに営業されていましたが、2014年に知子さんが継がれるタイミングで、店舗を構えられました。
モリモト 神保真珠商店でびわ湖真珠を扱い始めたきっかけって何だったんですか?
知子さん 元々英語の通訳だった祖父が、定年後の仕事としてアタッシュケースに入れたびわ湖真珠の商品を訪問で販売し始めました。それが神保真珠商店の始まりです。私自身は女性っぽいものが好きなタイプではありませんでしたが、祖父が英語を喋ったり、真珠を売っている姿を見て、かっこいいなと憧れていました。
1980年代にびわ湖の水質が一気に悪くなり、100件ほどあったびわ湖真珠の養殖業者さんが10件まで減ったそう。そんな時代に直面していたお祖父様やお父様に促される形で家業は継がず、短大を卒業後は図面の専門学校で機械図面を学び、プラント設計の会社に勤められました。
知子さん 入社した先ではCAD設計を学び、図面を描いては、現場に指示を出しに行く。男社会でしたし、とてもハードな環境でした。体力のいる職場でしたがその分やりがいもたくさんあり、結局その会社で18年間も働いていました。その時は家業のことは全く考えておらず、自分の仕事のことしか考えていない仕事人間でしたね。
30代後半に勤め先の会社が合併し、東京に会社が移転することに。その出来事が人生を考えるきっかけになったそうです。
知子さん 東京に来てほしいと言われたんですが、30代後半で単身赴任を始めるのは考えられなかったのと、それまでは本当に自分のこと、仕事のことしか考えていなくて。周りの人や家族のこと、家業のことを改めて考え直すために、そのタイミングで思い切って仕事を辞めました。
当時、70歳になった父も仕事を辞めたいが、真珠の在庫が残っているから辞められないというので。そこで、それまでやっていたCAD設計の仕事をフリーランスでやりながら、家業も継ぐために「CAD設計の事務所」兼「神保真珠商店」として店舗を構えました。
知子さん もともとは親戚が営んでいる神保真珠貿易からびわ湖真珠を仕入れていたのですが、養殖業者さんと直接お話をする機会があったんです。
すでに存続する養殖業者さんは5件もなく、一人でされているところがほとんどでした。ちょうど海外バイヤーさんによる買い取り価格が下落し始めた頃で、養殖業者さんは厳しい状況にあると耳にしました。そこで、高値でもいいのでうちにびわ湖真珠を売ってくれないかと交渉しました。
びわ湖真珠の大変さに直面しつつも、その素晴らしさを伝え続けたいと決意を固めた知子さん。「父が残していた在庫を売り切ってお店はしまうつもりだったんですが(笑)」と笑いながらお話ししてくださいました。
前職でも設計など「ものづくり」をされていた知子さんは、家業を継いでからもその経験が生かされているそうです。
知子さん ものづくりの現場で働いていたので、職人さんがどういうスタンスとプライドを持って制作されているのかを理解しようとしていますし、職人さんへのリスペクトがあります。
びわ湖真珠に関しても、実は一番興味があったのが、養殖されている職人さんがどういった気持ちで真珠を育てているのかというところ。その想いを商品にしてお客さんに届けるのが私の使命だと思っています。
びわ湖真珠ができる池蝶貝は、貝の中で真珠を育てる年数が、3〜5年かかるそう。(ちなみに、海で育つ真珠は1〜2年の場合が多い)
それほどの期間を経るとどうしても均等にならずムラのある個性的な色や形になります。
これは養殖業者さんにも予想できない自然の領域で、想像よりも良いものが完成することがあるからそれが面白くてやめられないという職人さんもいるそう。
モリモト こんなに個性的なびわ湖真珠をジュエリーに展開するのってとても難しそうに感じるんですが、、、
知子さん 真珠以外のあしらいはほぼ最小限で作っています。
先ほども話した養殖業者さんの技術、人の手が及ばない自然の恵みとの組み合わせでできていて、真珠自体がもうすでにデザインされているものです。「びわ湖真珠を活かす」ことを第一に考えて、制作しています。特に個性的なものはジュエリーに落とし込むのが難しい時もありますが(笑)
元々がジュエリーデザイナーであればいろんなあしらいを細工したくなると思うんですが、デザイナーではないのであえてこだわらずシンプルにできるのが逆に良かった点かもしれません。
日常遣いもできるシンプルでカジュアルなデザインには、びわ湖という自然、育てる職人さん。そしてそれを商品に展開する知子さん。大勢の人の想いと技術の上で成り立っています。
そうした背景を知った上で改めて商品を見ると「ただの真珠じゃないんやで」と語りかけられているような気持ちに。
びわ湖にこんな美しい宝石が漂っているところを想像すると不思議だなと思うと同時に、滋賀県民としてはただならぬ愛着が湧いてくるのでした。
すっかりファンになってしまった私は、絶対また来ます!と言い残し、お父様からの「健康第一で!」という温かい言葉に見送られお店を後にしました。
ちなみにお店のロゴは池蝶貝を蝶に、真珠を蝶の羽の柄に見立てた印象的なマーク。
シルクスクリーン作家のmochimochiさんの作品で、店内にもいくつか展示されています。
びわ湖真珠⺟⾙の粉を⼀部使⽤したシルクスクリーンの作品も店舗で見られますので要チェックです!
【神保真珠商店】
神保真珠商店webサイト https://jinbo-pearls.jp/
神保真珠商店Instagram @jinbopearls