珍奇植物のデザイン

珍奇植物のインスピレーション

biwacommon編集部のジョーだ。今回は私が育てている珍奇植物(ビザールプランツ)の一部と、「珍奇」と呼ばれている理由を紹介していくぞ。自然が生み出す珍奇植物のデザインは、クリエイティブなインスピレーションを与えてくれるであろう! なお、写真の背景は生活感丸出しだが気にしないでほしい。

珍奇植物(ビザールプランツ)…簡単に言うと珍しい植物(球根植物・多肉植物・塊根植物など)の総称だ。

雑誌『BRUTUS』の衝撃

私の認識では、珍奇植物が流行したきっかけの一つは、2016年頃に雑誌『BRUTUS』で珍奇植物特集が組まれたことだと思う。BRUTUSがマニアックな植物をスタイリッシュでオシャレなものへと変えてしまったのだ。さすがプロの仕事である!

以降、コロナ禍のお家時間の充実も相まって珍奇植物シーンは急速に広がり、尋常でない盛り上がりが数年続いた。怪しい業者や転売屋もたくさんいた。今では落ち着きを取り戻し、好きな人が好きなように育成を楽しんでいるように思う。それでは紹介していこう!

パキポディウム・グラキリス 1

パキポディウムはマダガスカルに生息している塊根植物で、中でもグラキリスは珍奇植物の中心的な存在だ。成長が非常に遅く、苗から成熟した植物になるまで数年から数十年以上かかる。
写真のグラキリスは国内実生(日本で種から育てたもの)ではなく現地球(生息地から輸出されたもの)だ。

パキポディウム・グラキリス 2

一番の特徴は大きく太った塊根だ。雨の少ない厳しい環境を耐え抜くために、塊根部に水分を蓄えて肥大化し、このような姿になったといわれている。
「水を蓄える」という機能が、「大きく太った塊根」として珍奇なデザインになっている。

アガベ・オテロイ 1

アガベはリュウゼツラン科の多肉植物で、原産地のメキシコではテキーラの原料として使われている。美しさと野性味溢れる姿が魅力で、観賞価値が高く人気がある。
同じオテロイでも個体により特徴が異なり、採取者が選りすぐりの株に名前をつけた「ネームド株」と呼ばれるバリエーションが数多く存在する。昔は高価だったネームド株も、現在ではメリクロン株(人工的に培養した株)で普及しているため、お財布にやさしい金額で手に入れることができるぞ。

アガベ・オテロイ 2

一番の特徴は中央からロゼット状に展開する葉だ。表面積を拡張し光合成の効率を上げるために、このような姿になったといわれている。
「光を効率的に受け取る」という機能が、「ロゼット状に展開する葉」として珍奇なデザインになっている。

また、鋸歯(きょし)と呼ばれる葉の先端の厳つい白い部分には、「動物などに簡単に食べられないための防衛」や「水分の蒸散を防ぐ」という機能がある。

コピアポア・シネレア 1

コピアポアはチリの乾燥した沿岸砂漠、特にアタカマ砂漠(世界で最も乾燥した砂漠)に生息するサボテンだ。強い日差し、昼夜の温度差、乾いた風、海から寄せる霧、過酷な自然から生み出されるワイルドな佇まいが魅力だ。

コピアポア・シネレア 2

一番の特徴は蝋質の白肌だ。強い日差しから水分の蒸発を防ぎ、紫外線から身を守るために肌から蝋質を分泌し、このような姿になったといわれている。あるいは、蝋質の白肌は結露しやすく、霧の水分を表皮から根際に流し込むためともいわれている。まだまだ解明されていないことが多いサボテンだ。
「水分の蒸発を防ぎ紫外線から身を守る / 結露させた霧の水分を表皮から根際に流し込む」という機能が、「蝋質の白肌」として珍奇なデザインになっている。

※写真のコピアポアは国内実生(日本で種から育てたもの)のためそれほどではないが、現地球(生息地から輸出されたもの)はドクロのように真っ白だ。育てる環境によって姿形がかなり異なるのも魅力だ。

デザインとは機能である

紹介したように、珍奇植物のデザインとは過酷な環境に適応し、生存するために備わった機能だ。だからこそ、強烈な個性と魅力を放つ。見た目だけのおもしろさや、何となくでデザインをしてはいけないと教えられる!
とはいえ園芸は道楽だ。始めるきっかけは「おもしろそうだから」という好奇心で十分だ。自分なりに知識と経験を積み重ね、天気や季節に敏感になり、成長と変化を実感すると毎日が少し楽しくなる。

珍奇植物(ビザールプランツ)に興味を持ったら育ててみてほしい! その際、ベランダを占領してしまうと家族から白い目で見られるので要注意だ。